かつて港湾作業といえば、作業員が数十メートルもの高さのガントリークレーンに登り、連続12時間の作業に耐えるなど、体力的にも技術的にも厳しいものだった。一方、先ごろ取材した重慶両路寸灘保税港区では、こうしたものとおよそ異なる光景が広がっていた。ここでは搬送ロボットが頻繁に行き来し、自動化されたタイヤ式門型クレーンが正確にコンテナを吊り上げていた。いずれも港湾エリアに構築されたクラウドプラットフォームやデジタルプラットフォーム、5Gネットワーク、水平輸送デジタルシステムによって実現されたものだ。
こうした光景は、デジタルの波があらゆる業界に押し寄せていることの縮図に過ぎない。今やモノのインターネット(IoT)やクラウドコンピューティング、人工知能(AI)、ビッグデータなど、次世代情報技術が深く交錯・融合し、ほぼすべて産業を飲み込もうとしており、デジタルエコノミーが人間の働き方や生活様式を大きく変えている。
政府系シンクタンク、中国(深圳)総合開発研究院の樊綱院長は「デジタル技術は消費者サイドから生産サイドへ向かっている」と指摘。デジタルトランスフォーメーション(DX)は、ある意味、企業の構造や組織の形を変えることだとの認識を示した。デジタル技術を活用する企業がより低コストのソリューションを提供できるかどうかは、製造企業が如何にしてデジタル化を積極的に導入し、成功できるかにかかっている。
工業・情報化部の最新データによると、中国のAI中核産業の市場規模は4千億元を超え、企業数は3千社以上になった。上半期はオンラインショッピングやオンライン教育、遠隔医療などの「非接触型経済」が軒並み急成長し、電子情報製造業やソフトウェア産業、通信業、インターネットの売上高は10兆元を超えた。