今年の夏入りから北半球全体が高温に見舞われ、異常気象が多発している。高温、洪水、干ばつ。これらの頻度と強度が上がり続ける異常気象は世界経済に大きな影響を及ぼすが、農業が真っ先にその衝撃を受ける。
異常気象による食糧安全への脅威という世界的な挑戦に対応するにはどうすべきか。「人工知能(AI)+農業」を始めとする気候スマート農業の発展は、その突破口になるかもしれない。
「スマート農業」とは新しい概念ではないが、AI+農業の発展と更新が近年、急速に進んでいる。BBCの報道によると、米国の農業界の87%の企業が2021年末現在で、何らかの形式でAIを導入している。米連邦政府も現在、同技術の農業における発展を注視しており、全国範囲のAI開発及び配備の加速に財政支援を提供している。
中国農業科学院農業資源・農業区画研究所スマート農業イノベーションチームの李文娟研究員は取材に応じた際に、「AI+農業はスマート農業の一部として見ることができる。農業分野での応用範囲は非常に広く、農業に力強いサポートを提供できる」と述べた。
李氏の説明によると、リアルタイム観測で作物をより詳細に管理できるだけでなく、化学肥料、農薬、水などの資源の消費量を減らし、農業のグリーンな発展を実現できる。伝統的な農業における作物の播種や収穫などは人の力が必要だったが、AI技術を使うスマート農機は多くのマンパワーを節約し、より高品質で効率的だ。ドローンによる農薬散布、スマート農機施肥・収穫一体化などの技術はすでに、中国及び世界各地で普及しており、農家の作業量を減らしているという。
BBCはこのほど、「米シリコンバレーAIスタートアップ企業のClimate Aiは現在、あるAIプラットフォームを研究開発している。これは今後20年の農作物の温暖化への抵抗力を見積もり、農家による農作物の計画と管理をアシストする」と伝えた。
米市場調査及びコンサルティング会社のマーケッツアンドマーケッツが発表した最新の報告書によると、世界の農業AIの市場規模は23年の17億ドルから28年の47億ドルに拡大する。23-28年の年平均増加率は23.1%を予想。AIが農業において従来の手法より優れていることが市場拡大につながる。
実際に「AI+農業」の実践は、世界範囲でスムーズに進められている。アイダホ州の製粉会社Shepherd’s Grainは昨年よりClimate AiのAI技術を導入し、農家による作物のより良い生産管理を支援している。報道によると、Climate Aiは一定期間の衛星画像、気温、降水量などのデータを結びつけ予測を行い、農家に1時間から6カ月の天気予報を提供する。さらに特定の作物の栽培及び収穫の時期を提案し、その生産量を予測する。同プラットフォームは作物の栽培、開花、種ができる時期を把握する。この技術の応用範囲は現在、米国からカナダ、豪州、ラテンアメリカに広がっている。
Climate Aiの他にも、多くのテック企業が「AI+農業」に科学研究の方向を向けている。中国の「AI+農業」の応用も現在、過去にないペースで進められている。中国農業大学が昨年10月に発表した「神農大規模モデル1.0」は、中国の農業テクノロジー分野のAI応用の重要な突破を象徴する。中国農業科学院のチームが研究開発したAI意思決定補助モデルが最近、屋外の農地で実力を発揮した。各種AI大規模モデルの力強い発展は、中国のスマート農業の発展に新たな原動力を注いだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年6月21日