欧州当局者は全体的に、寧徳時代などの中国電池メーカーや、BYDのハンガリーや奇瑞汽車のスペインなどの中国電気自動車(EV)メーカーからの投資を歓迎している。ところが米国の当局者は異なる。ホワイトハウスは中国の「スマートコネクテッドカー」の規制を検討している。この新型車が利用者のデータを中国に送る可能性があるからだ。欧州はこのリスクを米国ほど懸念していない。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」が伝えた。
欧州による審査の強化の影響を受け、中国の欧州企業へのM&Aが近年制限されているが、中国のグリーンフィールド投資(企業もしくは工場の新設)が急増を迎えている。中国の昨年の欧州におけるグリーンフィールド投資プロジェクトは、その投資全体の78%を占めた。
欧州は「チャイナショック2.0」と「トランプ再選」の間でバランスをとる必要がある。バイデン政権の中国車への追加関税と比べると、EUが今月発表した関税率はその半分だ。一部のアナリストは、これは中国自動車メーカーの欧州での工場建設を暗に励ましていると見ている。実際に一部の中国自動車メーカーがすでにそうしている。
欧州と中国にとって、より緊密な協力はトランプ再戦への相殺になる。トランプ氏は、すべての輸入品に対して全面的に10%の追加関税を導入すると表明した。これは完全に米国に縛り付けられないよう欧州を脅かすと同時に、欧州との緊張関係を和らげ欧州という有利な市場を維持するよう中国側に促している。
ピーターソン国際経済研究所シニア研究員のヤコブ・キルケガード氏は、欧州の態度は「中国EU産業総合体の存在」を認めると同時に、この総合体の発展を「明確に奨励」しているとの見方を示した。欧州自動車産業は合弁企業により中国の産業と強く結びついている。フォルクスワーゲンの自動車販売台数の3分の1と大半の利益が中国から得られている。
国際貿易体制がひとたび崩壊すれば、欧州は米国以上の損失を被る。欧州の製造業の雇用枠は米国の2.5倍で、かつ欧州の製造業の製品は3分の1超が輸出されている(米国は5分の1のみ)。欧州の経済規模に占める製造業の割合は15%で、ドイツは18%、米国は11%のみ。
しかし昔ならば欧州から調達する必要があった製品でも、中国は自身の競争力を持続的に高めている。中国企業が現在生産する工業設備の数は米国、ドイツ、日本の合計を上回る。ロジウム・グループのアナリストであるノア・バーキン氏は、「昔の中国は外国からの投資を歓迎し新技術を導入していたが、現在の欧州はその向きを変えようとしている」と述べた。
中国のEV販売台数は今年、昨年をさらに上回る見込みだが、欧州は150万台から120万台に減る可能性がある。中国自動車メーカーは規模の経済の強みにより、世界の競合他社をリードする。一部のアナリストは、中国自動車メーカーの欧州での発展を認めることは、より多くの消費者にEVシフトを促す一助となり、欧州自動車メーカーにとって有利だと述べた。これは欧州と中国のEV市場が、コストパフォーマンスの低い米国市場をリードする一助にもなるという。
ドイツ自動車産業専門家のフェルディナント・ドゥーデンヘファー氏は、「トランプ氏が再戦するリスクを考慮し、欧州は相殺措置として中国により開放的になるべきだ。中国自動車メーカーは我々の未来への邁進の加速を支える。大発展を迎える地域は米国ではなくアジアだ」と述べた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年6月24日