クライスラーの馬力、フォードの力強さ、キャデラックのリッチさが、後発の中国勢に押されてしまったのだろうか。もちろんそうではないが、目をそらすことのできない事実がある。筆者の幼少期と比べると、自動車業界はメーカーにも技術にも天地を覆すような激変があった。米誌「フォーブス」(Web版)が伝えた。
中国自動車メーカーは今や一大勢力となり、西側及び日本自動車メーカーの自動車産業への束縛を打破しようとしている。それではこの大きな変化をもたらしたのは何か。分かりやすく言えば、電気自動車(EV)エコシステムのイノベーション、政府の支援、競争力ある価格設定、「中国の速度」、世界進出政策が中国車の台頭を後押ししている。
中国自動車業界が今後10年で爆発的な成長を迎えることは想像に難くない。2023年の生産台数は3000万台で、30−32年には3800万台を突破する見込みだ。輸出台数は30年に900万台を超えるだろう。中国はロシア、ブラジル、チリ、メキシコ、エジプト、南アフリカに内燃車を、UAE、豪州、タイ、マレーシア、インドネシア、英国、ドイツ、ノルウェー、その他の複数の欧州諸国にEVを輸出する。世界の乗用車生産台数に占める中国の割合も38%以上になる。これは世界の自動車大手としての中国の地位を固めると同時に、生産能力と急速に拡大する国際的な影響力により市場を再構築する。
中国のコスパ戦略は自動車業界に激変をもたらした。今や中国自動車メーカーよりもコストパフォーマンスの高い車を提供できる自動車メーカーは世界のどの国にもない。大多数の中国車は少なくとも、西側車と同じかより豊富な機能を提供できる。最も重要なのは、中国車が西側車より遥かに安いことだ。中国車の標準スペックに含まれるオプションにお金を払おうとする人はいない。
衝撃的なことに、中国のEVは競合他社より25−45%安い。これはどのようにして実現したのだろうか。中国はエコシステムを構築し、サプライチェーンを管理し、国内の比較的安い人件費を利用する。中国の大きな生産能力、安価な原材料、「一体化ダイカスト」などの先端技術は、デトロイトの「棺桶」に最後の釘を打つ。
しかしながら、中国自動車メーカーは製品の競争力を高め利益の最大化を実現するため、乗用車の生産コストのさらなる引き下げに専念している。中国はEVインフラの整備でも先頭を走っている。蔚来汽車や寧徳時代などの企業はバッテリー交換サービスを提供している。「中国の速度」も称賛されている。日本の自動車メーカーは新モデルの開発期間を48カ月に短縮したが、中国はこれを24カ月に短縮した。
世界のEV販売台数のうち中国が過半数を占めている。これは主に中国がバッテリー原材料の採掘・加工や、バッテリー製造で主導権を握っているからだ。ここに驚くべき関連データがある。世界のバッテリー原材料の加工の6割以上と、バッテリー製造の8割以上が中国で行われているのだ。上述した内容の他に、2060年までにカーボンニュートラルを実現するという中国の目標も、自動車業界に影響を及ぼす。中国が導入する国家排ガス規制を受け、自動車メーカーは生産の重点を内燃車からEVに置き直している。
中国の自動運転車は未来への邁進を加速中だ。中国は2023年末までに17カ所の国家級スマートコネクテッドカーテストモデルエリアを建設した。開放中のテストモデル道路は2万2000キロ以上で、5200枚以上のテストモデルナンバープレートを発給している。路上テスト総距離は累計8800万キロ。
上述したように、中国自動車メーカーは近年すでに侮れない勢力になっており、かつこの状況が短期間内に変化することはないだろう。価格設定、サプライチェーンの強み、バッテリー技術、ネットワーク利用、自動運転計算プラットフォームのどの面でも、中国製のエキサイティングな自動車をより多く目にするようになる。筆者は中国製の自動車を何台か運転したが、西側や日本の車に引けを取らず、むしろ上回る場合もあった。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年12月2日