文=小林正弘
清華大学法学博士 Genuineways IP Inc.パートナー
11月5日から10日まで上海にて第八回中国国際輸入博覧会(以下「輸入博」)が開催された。今回の輸入博は155カ国・地域から4108企業(前年比約600社増)が出展し、累計92万人以上が43万㎡(約東京ドーム9個分)の会場を訪れ、成約見込み額(年間)が約835億ドル(前年比4.4%増)に達し過去最大規模となっただけでなく、461の新製品・新技術・新サービスが展示され、そのうち約半数が世界初公開であった点が注目される。
五十嵐弘旭化成株式会社中国総代表は中国メディアの取材に「旭化成にとって、輸入博の最大の魅力は、共創のプラットフォームを提供している点にある」と語り、松崎修旭化成研究開発本部長は旭化成が常に重視しているのは「技術を中国に持ち込む」ことではなく、「中国と共創する」ことだとし、今後も中国市場に寄り添い、革新的なソリューションを創造していくと語った。
これは外国企業が中国をただ14億人の巨大市場として捉えているだけではなく、グリーン経済、AI、ロボット、低空経済、シルバー経済などの成長と発展が目覚しい中国に最先端技術などを投入し、現地企業と競争・提携・共同開発を行うことによって世界に通用する新たなイノベーションを産む最先端技術・サービスの研究開発および実験応用の戦略的中心拠点となっていることを示している。
外国企業が中国投資を決定する際の重要なファクターの一つとして市場の成熟性や安定性があげられる。中国は質の高い発展の継続により消費者のニーズが高度化・多様化しているだけでなく、第15次5カ年計画でも今後5年間の脱炭素、未来産業育成など最先端分野の発展の方向性および高度の市場開放が明確に示されており市場としての成熟性と安定性をそなえている。中国市場の戦略的重要性は今後益々重要性を増していくだろう。
実のところ輸入博の魅力は新技術分野だけはない。今回の輸入博ではアフリカ等の発展途上国に対して無料でブースが提供され、コーヒー豆などの現地特産品が紹介されていた。輸入博を通じて中国の消費者と繋がれば取引量と販売価格の両面での増加が見込まれ、発展途上国の発展支援にも繋がる。またJETROも日本企業148社と協力して190銘柄以上の日本酒と80種類以上の日本食品を紹介するなど過去最大となる取り組みを行い日本全国各地の美食をアピールしていた。輸入博を訪れるだけで日本全国の美酒を試飲できるのだ。ライブコマースなどデジタル経済が発展している中国では輸入博へ出展は14億人の巨大市場への効率的なアクセスになる。筆者も会場を訪れずにスマートフォンのライブ配信を通じてイタリア産酢の実演販売を楽しむことができた。輸入博の魅力は世界の食の祭典といえよう。筆者も次回は現場を訪れて世界各国の美食を発見し存分に堪能してみたいものである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年11月11日
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