トン族の「月の野菜を盗む」
湖南省に住むトン族には、中秋節の夜に「月の野菜を盗む」習慣がある。
伝説によると、中秋節の夜に、月にある宮殿に住む仙女たちが、人間の世界に降りてきて、清らかな水を世界の隅々にまくそうだ。仙女がまいた水はみんなのもので、その水を浴びた野菜もまたみんなのもの、それで人々は勝手に他人の畑に入り、野菜を取ってもいいとされている。そのためこの習慣が「月の野菜を盗む」と呼ばれている。
この日の夜、トン族の娘たちは、きれいな傘をさして、心に想う若者の畑に行き、野菜などを取る。そして、「おーい!野菜を採ったよ!家へお茶を飲みにきて!」と大声で伝える。このとき、二つ並んで実った瓜やインゲンなどが見つかったら、縁起がいいと言われている。また、既婚の女性たちも他人の畑に入り、大きな瓜やよく出来た枝豆などを一生懸命探す。この瓜や枝豆が、子供たちの健やかな成長を象徴するものだからだ。また男性たちも他人の畑に入って、野菜を取っていいことになっていて、仙女たちからの恵みを受けることができる。ただ、男性は取った野菜を家に持ち帰ることができず、野外で茹でるなどして食べなくてはならない。
「中国国際放送局 日本語部」より2008年9月4日
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