日本は「祭」がとても多い国だが、奇妙な「祭」も多々ある。古くから伝えられている伝統的なお祭りや行事は、今日になっても受け継がれ、人々に親しまれている。「奇祭」と言えば、新潟県で行われている「婿投げ祭り」を忘れてはいけない。新潟県十日町市松之山町では、女性が嫁いだ翌年の小正月に夫婦で帰省するのだが、その際に婿を崖から放り投げ、さらに家族の無病息災を祈願して墨を参加者一同でお互いの顔に塗りあう「祭」がある。
近年、松之山温泉では三組の新婚さんが「婿投げ」を体験した。この地区の花嫁をもらった婿たちは、正月に嫁の実家に帰省し、「主役」として、この「奇祭」に参加する資格を手にするのだ。
慣例によると、婿は和装で参加し、地域の男性陣に高々と胴上げされたあと、高さ約5メートルの崖から投げられ、坂を転がっていくという。松之山は豪雪地帯のため、婿は怪我をすることはないようだ。崖の下では新妻が待っており、転がってきた「婿」に駆け寄って、身体に付いた雪を払い、お互い抱擁を交わし、アツアツな様子が見受けられる。
言い伝えによると、このお祭りは現地の男性陣の「嫉妬心」から来ているという。十日町観光協会によると、「婿投げ」は300年以上前に始まり、当時、好きな女性を他の村の男性に奪われた腹いせに婿を投げたことが起源であるという。女性を奪われた男性は怒りを発散するために、愛していた女性を奪った新郎を雪の中に投げたのだ。
北陸地方にある新潟県は、寒さが厳しく、雪も多い。自分らの村の娘を奪った「罰」として、よその村の新郎を雪の中に放り込むことは、怒りの発散になるとともに、村に活気をもたらした。
婿を投げることはその後、習慣化し、今では正月の行事として定着している。伝統的な決まった段取りも存在する。今では、投げられる「婿」は家から薬師堂へと担がれていき、お堂から望む崖の上から、みなの大きな掛け声と共に放り投げられる。この後、薬師堂では賽の神と呼ばれる注連縄や正月飾りなどを集めた塔を燃やし、無病息災や商売繁盛を祈願する。燃やした後の墨は、皆でお互いに縁起の良い言葉を掛け合って、顔に塗りあう。昔、「婿投げ」は腹いせや大騒ぎするために行われていたが、今では新郎新婦が家族円満意に過ごせる事を願う幸せな「祭」となっている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2012年2月7日