第70回フランクフルト国際ブックフェアが閉幕した。今回のフェアでは中国人作家の名前が初めてつけられた「麦家文学の夜」著作権プロモーションや、SF作家の劉慈欣氏と海外の出版業者の対談なども行われ、大きな成功を収めたと言える。中でも、麦家氏の小説『風声』は20カ国近くの出版会社が国際著作権を争った。
業界関係者は、莫言氏、麦家氏、劉慈欣氏ら、SF小説『三体』、金庸氏侠客作品 『射彫英雄伝』、スパイ小説『解密』、『風声』などは海外の出版業者が中国の物語を選ぶ際の選択肢を広げたと見ている。このような小説は西側の読者が中国文学の「秘密を探る」新たな入り口になっているという。
読者を最も引きつける小説を「道を切り開くパイオニア」に
フランクフルト・ブックフェアの会場では、激しい争いの末、イギリスのHead of Zeus出版社が麦家氏の小説『風声』の英語版出版権を獲得した。同社は過去に『三体』英語版も出版している。英語版出版権のほか、『風声』のイタリア語、ポルトガル語、フィンランド語版も出版業者と契約を交わし、ドイツ語、スペイン語、フランス語、オランダ語、韓国語など十数カ国語の翻訳版も合意に達した。
海外の出版業者の多くが『風声』に注目する理由について、麦家氏の小説『解密』が欧米市場で売れたためだとしている。『解密』はこれまでに33カ国語で出版され、海外のベストセラーとなり、英誌The Economistの「2014年度世界の小説トップ10」に選ばれた。また、007シリーズ映画の原作、『ボーン・アイデンティティー』原作小説とともに『デイリー・メール』の「史上最も優れたスパイ小説20作品」にも選ばれた。
この点について、麦家氏の海外出版権エージェントを務める譚光磊氏は、「道を切り開くパイオニアになることが重要」と強調した。『風声』は譚光磊氏が読んだ最初の麦家氏の作品だが、彼が『解密』をプロモーションの1作目に選んだ理由について次のようにした。『風声』の登場人物の背景と関係は複雑なため、西側の読者にとって理解しにくく、多くの中国人読者もスペインの内戦についてよく知らない。一方、『解密』は数学の天才の容金珍の成長を描いた作品で、理解しやすい内容となっている。『解密』の基礎ができれば、麦家氏を好きな外国の読者と出版社は『風声』の複雑な歴史背景を理解しやすくなる。