ブラックホールはドーナツのようにありふれたものに見えるが、それでも世界で最も謎に満ちた、注目を集める天体の一つだ。
ネイチャー誌(電子版)は先ほど、中国極地研究センター、中国科学院国家天文台、中国科学技術大学が国内外の科学研究機関及び大学と共同で行った、ブラックホール研究の重要な成果を掲載した。論文名は「準恒星状天体の特大質量ブラックホールの降着円盤にに供給される燃料のコアゾーン急速内部流」。
この研究は論文名と同じく、深く計り知れない。分かりやすく言えば、中国の科学研究チームによる今回の貢献は、重要なブラックホール理論「降着理論」に確かな観測の証拠を提供した。
同論文の著者の一人、中国極地研究センター南極天文学研究室の姜鵬副研究員は「星系は宇宙の基本単位で、天文学者はそのほぼすべての中心に特大質量ブラックホールがあると考えている。大多数の星系における特大質量ブラックホールは静かだが、一部の星系内の特大質量ブラックホールは活動する。大量のガスがブラックホールの流動に向かい発光する降着円盤を形成する。この星系の中心の輝度は星系全体の平均を大幅に上回る。我々はこの星系を準恒星状天体と呼んでいる」と説明した。
ブラックホールはなぜ黒いのだろうか。それは質量が特大で引力が非常に強く、光さえ飲み込んでしまうほどだからだ。しかし「準恒星状天体は宇宙で最も明るい天体の一つで、遠い星系における強烈な発光現象」だ。
準恒星状天体はなぜ明るいのだろうか。ブラックホールの降着理論によると、それは星系のガスがブラックホールから約1光年の位置まで下りてくると、ブラックホールの強い引力と高速回転が円盤状のガスの流れ(降着円盤)を生むからだ。降着円盤におけるガスは高速で衝突・摩擦し大きな熱を持ち、太陽の輝度の数兆倍のエネルギーを放出する。その発光は星系全体をはるかに上回るため、ドーナツのような光の輪に見える。
しかしこれは一つの理論モデルに過ぎず、人類はガスがブラックホールの降着円盤に流れ込むのを目にしていなかった。そのため発光するドーナツに尽きることなき燃料を提供しているのが何かが特定されていなかった。科学者はさらに、半径約1万光年から10万光年の広い星系における宇宙塵がブラックホールの所在地を正確に見つけ、さらにこの方向にそって正確に流動するかについても確認できていなかった。姜氏は「これは100歩離れたところから銅銭を射抜くくらい難しい」と分かりやすく例えた。
姜氏のチームは先ほど、ガスが降着円盤に流入する過程を発見し、ブラックホールの降着理論の重要な証拠を見つけ、最後のピースをはめ込んだ。
姜氏によると、ガスが降着円盤に流入するのが証明されていなかったのは、ブラックホールが地球から遠すぎ、はっきり目にすることができなかったからだ。彼らが研究するブラックホールの一つは、地球から約125億光年離れている。同チームはこの問題について、宇宙で最も豊富な水素・ヘリウム元素のスペクトル吸収線の特徴による気流追跡方法を提唱した。