3.中日比較:文化産業と観光産業の相互発展
2018年3月、中国は文化・旅遊部(省)を設立し、文化と観光両産業を一つの部門で管理することとなった。これは、文化と観光という二つの産業の相互発展を促す重要な措置である。
中国の文化と観光両産業の相互発展の状況を分析するために、本論は「中国都市総合発展指標」を用い、全国297地級市以上の都市の“文化・スポーツ・娯楽輻射力2019”と海外旅行客数との相関関係を分析した。その結果、両者の相関係数は僅か0.55に過ぎなかった。
相関分析は、二つの要素の相関関連性の強弱を分析する手法である。係数が1に近い程、二つの要素の間の関連性が強い。相関係数が0.55であることは、両者の関連性がそれほど高くないことを意味する。
本論はまた、日本の47都道府県の“文化・スポーツ・娯楽輻射力2019”と海外旅行客数との相関関係を分析した。その結果、両者の相関係数は0.82に達した。相関係数が0.8−0.9になると、「非常に強い相関」とされる。つまり、日本では“文化・スポーツ・娯楽輻射力”が強い都市で、インバウンドも盛んである。
上記の中日相関関係の分析から伺えるのは、日本ではすでに文化産業と観光産業において、相互発展の局面が形成されているといえよう。これに対して、中国では文化産業と観光産業の間の連携がまだ乏しい。
戦後、製造業の輸出力を伸ばすことで経済大国に上り詰めた日本は、2003年に突如「観光立国」政策を打ち出した。同年、日本の海外旅行客数は僅か521万人で、世界ランキング中第31位に甘んじていた。
立国政策にまで持ち上げられた日本の観光産業はその後、猛発展を遂げた。2009年には、海外旅行客数は3,188万人に達した。
2003年から2018年までに日本の海外観光客数は5倍も伸びた。その間、海外諸外国の同伸び率は其々、ドイツは1.1倍、中国とアメリカは共に0.9倍、スペインとイギリスは共に0.6倍、フランスは僅か0.2倍であった。
日本ではインバウンド政策が奏功した。海外観光客数世界ランキングにおいても日本は、2003年の第31位から2018年の第11位へと、15年間で20カ国を飛び越える躍進ぶりだった。
相関関係分析の中日比較で、もう一つの違いが明らかになった。中国の海外旅行客数と国内旅行客数との相関係数は僅か0.45であり、両者の間の関連性は低かった。つまり、国内旅行客が大勢詰めかける都市は必ずしもインバウンドの盛んな地域ではなかったのだ。世界に大勢の海外観光客を送り出している中国で、海外観光客と国内観光客の地域嗜好の違いが大きいことは、実に考え深い。
これに対して、日本では海外観光客数と国内観光客数の相関係数は0.87に達し、「完全相関」に近い。すなわち海外観光客も国内観光客もほぼ同じ地域嗜好になっている。これは興味深い発見である。
もちろんこうした違いをもたらした一つの理由は、中国大陸に訪れた海外観光客数の中に、香港、澳門(マカオ)、台湾省の華僑のデータが含まれていることにある。彼らは頻繁に広東省、福建省の沿海の都市を往来している。このような統計コンセプトの特色も、中国における海外観光客数と国内観光客数の二つのデータの「関連性」の低さを助長している。