中国の語言文学雑誌「咬文嚼字」編集部は8日、「2021年流行語トップ10」を発表した。今年は「百年未有之大変局(百年間なかった大変動)」、「小康(ややゆとりのある)」、「赶考(力試し)」、「双減(ダブル負担軽減)」、「碳達峰(二酸化炭素<CO2>排出量ピークアウト)、碳中和(カーボンニュートラル)」、「野性消費(ワイルドな消費)」、「破防(ガードオファ)」、「鶏娃(親が子供に詰め込み教育すること)」、「躺平(寝そべり現象)」、「元宇宙(メタバース)」が選ばれた。
1、百年未有之大変局(百年間なかった大変動)
2017年12月、習近平総書記は、ある演説で、「世界に目を向けると、百年間なかった大変動に直面している」と語った。そして、習総書記はその後も、重要な会議や重要なシーンで、たびたび「百年間なかった大変動」について言及してきた。中国の発展は、未曾有のチャンスだけでなく、未曾有の課題にも直面している。中国共産党は、1921年から2021年までの100年間奮闘し続け、中国の人民の前途と運命を根本から変化させ、中華民族の偉大な復興実現という正しい道を切り開き、世界の歴史の進展に多大な影響を与えてきた。2012年の中国共産党第18回全国代表大会開催以来、中国共産党は全国各民族の人民を団結させて率いて、「2つの百年」の1つ目となる百年の奮闘目標を達成し、中華民族の偉大な復興という壮大な目標の達成のために前進し続け、党と国家事業は歴史的成果を挙げただけでなく、歴史的変化を遂げ、中華民族の偉大な復興の実現のために、より整備された制度的サポート、より強固な物質的基礎、より積極的な精神的パワーを提供し、中華民族は立ち上がり、豊かになり、強大になるという偉大な飛躍を経験している。歴史は中国共産党の力強い指導が課題を克服し、局面の変化に対応し、中華民族の偉大な復興という中国の夢の実現を保証する基礎となっていることを証明している。
2、小康(ややゆとりのある)
小康社会(ややゆとりのある社会)というのは、中国人がこれまで常に憧れ、追い求めてきた繫栄した経済と安定した社会、そして豊かな暮らしを実現する社会だ。1978年から始まった改革開放の当初、中国共産党は「小康社会建設」という目標を掲げた。中国共産党第18回全国代表大会の報告には、「小康社会の全面的な完成」という目標を明確に掲げた。そして、中国共産党第19回全国代表大会は、「小康社会の全面的な完成のための最終局面」に向けた動員令を発した。「ややゆとりがあるかどうかは一般の人々を見なければならない」とされてきたように、小康社会の全面的な完成のためには、貧困脱却の難関攻略が最低限クリアすべき任務であり、これを攻略しなければ、小康社会の全面的な完成はありえない。中国共産党はターゲットをしぼった貧困者支援を続け、衣食の愁いなく、義務教育と基本医療、住宅の安全を保障する事業目標を掲げ、「軍令状」式責任制を実行し、全党、全国、全社会の力を投入して、上から下まで心を一つにし、全力を注ぎ、難関中の難関を攻略し、難題中の難題を解決し、人類史上においても最大の規模と総力で貧困脱却の難関攻略に取り組んできた。中国共産党第18回全国代表大会開催以来、中国全土の貧困県832県全てが貧困から脱却し、貧困村12万8000村が全て貧困から脱却した。そして、農村の貧困人口約1億人が貧困から脱却し、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダの貧困削減目標を10年前倒しで達成し、絶対的貧困という問題の解決という歴史的偉業を成し遂げ、人類の貧困削減史上において奇跡を起こした。中国共産党創立100周年記念式典で、習総書記は、「中国は小康社会を全面的に完成させた」と厳かに宣言した。千年にわたり夢見てきた「小康社会」が実現し、「小康」には新たな時代的意味が加わり、新たな命の活力を放つようになっている。
3、赶考(力試し)
中華人民共和国成立前、毛沢東氏は、中国共産党中央の総本部があった河北省石家荘市平山県西柏坡から北京へ向かう際、「今日は『力試し』のために北京に行く日」だと語り、全党員に対して、「謙虚で、慎重、おごらず、焦らない姿勢、必死になって奮闘する姿勢を持ち続けなければならない」と激励した。初心を忘れなければ、目標は達成できる。過去100年、党は人民と歴史に対し、極めて優れた解答を提出してきた。習近平総書記は、西柏坡を視察した際、「我々が直面している課題、問題は依然として厳しく複雑で、『力試し』はまだまだ終わっていない」と語った。また、中国共産党創立100周年記念式典の重要談話でも、習総書記は、「中国共産党は今、団結して、中国の人民が『2つ目の百年の奮闘目標』を達成するための新たに実力を試される道のりを歩み出した」と再び強調した。「中国共産党の百年奮闘の重大な成果と歴史的経験に関する中共中央の決議」は、「時代が出題し、我々が解答し、人民が採点する。今後もよい成績を挙げ続け、新時代、新しい長旅において、新たな気勢を上げ、新たな成果を挙げなければならない」と言及している。新たに実力を試される道のりをしっかり歩み、これまでの苦難と輝きを忘れず、恥じることなく今日の使命を担い、明日の偉大な夢に背かず、歴史を教訓にして、未来を切り開き、懸命に奮闘し、勇敢に前進し、「2つの百年」のうちの2つ目の百年の奮闘目標を達成し、中華民族の偉大な復興という中国の夢を実現するために、奮闘し続けなければならない。「力試し」というのは、中国共産党がいばらの道を切り開き、試行錯誤する中で、輝かしい成果を挙げ、未来を切り開き続けるために奮闘する姿を生き生きと描写している。
4、双減(ダブル負担軽減)
今年5月21日、習近平総書記が議長を務める中央改革の全面的深化委員会第19回会議で、「義務教育段階にある学生の宿題と学習塾の負担をさらに軽減することに関する意見」が承認された。義務教育段階にある学生の宿題と学習塾の負担軽減の略称として「ダブル負担軽減」という言葉が使用されており、小中高生の負担が重すぎるという問題に焦点を絞っている。現在、「校内の負担は軽減する一方で、校外の負担が増加している」という現象が際立っており、多くの青少年の身心の健康に深刻な影響が及んでいる。「ダブル負担軽減」の意見が発表されて以降、驚異的な効果が表れている。学校の主な教育現場としての役割が強化され、学習塾などの無秩序な発展が効果的に抑制されただけでなく、社会各界、特に保護者がより合理的な教育理念やスタイルについて考え直し、それを模索する良い機会となっている。
5、碳达峰(二酸化炭素<CO2>排出量ピークアウト)、碳中和(カーボンニュートラル)
「CO2排出量ピークアウト」とは、CO2の排出量増加に歯止めをかけ、ピークに達した後は減少に転じさせることを指す。一方、「カーボンニュートラル」とは、企業や団体、個人が、植樹・造林、省エネ・排ガス減少などを通して、CO2排出量を減らし、CO2の「排出ゼロ」を目指すことを指す。2020年9月22日、習近平国家主席は、第75回国連総会の演説で、「中国は2030年までにCO2排出のピークアウトを目指し、2060年までに、カーボンニュートラルを実現できるよう取り組む」との目標を発表した。また、今年の全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)でも、「CO2排出量ピークアウト」と「カーボンニュートラル」が、「政府活動報告」に組み込まれ、再び広く注目を集めた。この2つの目標は、中華民族の永続的な発展と人類運命共同体構築に関わる重大な戦略的方針で、中国の「言った約束は守り、行なう以上は必ずやり遂げる」という大国としての責任感を十分に反映している。「CO2排出量ピークアウト」と「カーボンニュートラル」は、グリーン、環境保護、低炭素なライフスタイルを提唱している。資源のリサイクルを推進し、資源の利用効率を向上させることは、私たち一人ひとりと関係している。
6、野性消費(ワイルドな消費)
今年7月、河南省は大規模な洪水に見舞われた。その際、中国のあるスポーツメーカーが5000万元(1元は約17.7円)相当の物資を寄付し、復興を陰ながら支えた。それを知って感動したネットユーザーたちは、ライブコマースを通して次々に同メーカーの商品を購入し、この思いやりに満ちた企業を応援する気持ちを示した。その時、ライブコマースのパーソナリティーが「理性的に消費するように」とアドバイスしたところ、弾幕を通して、ネットユーザーから「私はワイルドに消費したい」というコメントが返ってきた。中国語の「野性」とは、ワイルドな性質を表しており、「ワイルドな消費」とは、つまり何にも縛られず消費することを指す。そしてその率直なワードからは、親切な行動をしたいという強い思いがにじみ出ている。このような「ワイルドな消費」によって親切な思いがあふれ出て来るという現象の発生には、人々の思いとしっかりした品質という現実がベースとなっている。まず、良心的な企業が、見返りを求めずに人助けをし、それを目にした多くのネットユーザーが親切な行動で報いたいという感情が一つのベースとなってる。そして現在、中国国産品の品質が全面的に向上しており、その中国の伝統要素を取り入れたおしゃれな商品は高品質であるにもかかわらずリーズナブルで、それが品質という面でのベースになっている。それ故、多くの消費者も安心して商品を購入したのだと言える。
7、破防(ガードオファ)
「ガードオファ」は元々、特殊な物理的攻撃により、ガードを突破されたという意味のゲーム用語だった。その後、中国のネット上で、心理的防御線を突破された時にも使われるようになった。心を傷つけられ、悲しくなったり、つらくなったりした時や心が揺り動かされて共感を覚えたり、感動した時などに、「ガードオファ」されたと使うことができる。現在は後者の意味で使われることが多くなっている。
8、鶏娃(親が子供に詰め込み教育すること)
中国にはかつて「打鶏血」という、精をつけるためにニワトリの血を注射するという民間療法があった。ただ、科学的根拠に基づいていなかったため、その療法は早々と姿を消した。しかし、「打鶏血」という言葉は今でも、興奮して鼻息を荒くしている人をからかったり、皮肉ったりする時によく使われており、「クレイジー」や「すっかり夢中」といった状態を指すようになっている。近年、進学をめぐる競争が非常に熾烈で、スタート地点で後れを取りたくないと考え、子供を塾に行かせたり、幾つも習い事をさせたりする保護者が増加している。こうした「クレイジー」な教育スタイルが、まるで「子供にニワトリの血を注射するようなもの」と揶揄されるようになり、それを略した「鶏娃(親が子供に詰め込み教育すること)」という言葉が誕生した。しかし今や子供に詰め込み教育をしたところで、積極的な効果はそれほど見られないどころか、親も子供も、心身ともに疲弊しきっているというのが否定できない現実となっている。このように「ニワトリの血を注射する」療法が非科学的であるのと同じように、無理やり知識を詰め込まれた「鶏娃」もまた提唱に値しないことは明白だ。また、中国語における「鶏」という名詞が現在すでに動詞として使われるようになっていることも注意が必要だ。
9、躺平(寝そべり現象)
「寝そべる」というのは本来、「横になって休む」という意味だったが、現在では「何もしない」や「抵抗しない」、「頑張らない」といった生活態度を指す時に使う人が多くなっている。そして、こうした生活理念を抱き、様々なストレスに対して、「寝そべる」ことを選ぶ人たちを「躺平族(寝そべり族)」と呼ぶようになっている。ただ実際には、「寝そべる」若者の多くが、本当の意味で「何もしない」というわけではなく、現在の生活における極めて大きなストレスや「内巻(閉鎖的な環境で内部の激しい競争に巻き込まれる状況)」に対して、自嘲的に抵抗しているに過ぎない。「躺平族」も、「寝そべる」ことで「勝てる」と思ってはおらず、ただ今日は「寝そべる」ことで、エネルギーを充電して明日にはもっと元気に頑張ろうとしているのだ。若者は、「競争」に対して理性的な見方を抱き、プレッシャーにも積極的な態度で対応し、決して諦めることなく、夢と将来のために一生懸命奮闘しなければならない。
10、元宇宙(メタバース)
世界最大のSNSであるFacebookが今年10月末、社名を「Meta」に変更すると発表し、世界中で注目を集めた。「メタバース」は元々、SF作家のニール・スティーヴンスンの小説「スノウ・クラッシュ」に登場する架空の仮想空間サービスの名称だった。仮想空間と現実世界が融合するメタバースは、ソーシャルメディアやゲーム、仕事といったシーンに変革をもたらす巨大なチャンスを秘めていることは否定できない事実だ。「メタバース」に基づいて発生した一連の構想の背後に、人類のライフスタイルを大きく変える可能性がある。ただ、メタバースは、現時点では初期の発展段階にあり、産業としては依然としてたくさんの不確定要素があり、産業の発展や市場の投資といった面では、理性的な判断が必要だ。
(編集KN)
「人民網日本語版」2021年12月13日