内蒙古自治区のフルンベル草原。その錫尼河畔に住む遊牧民族、蒙古族(プリヤトゥ)の大半はすでに定住生活を始めた。それでも今もなお、半定住の「泥包」生活を送る人々がいる。 「泥包」の外観はフェルト製の蒙古包(パオ)とよく似ている。ヤナギの枝を並べて泥で覆って固め、内部には木の板を敷き、炉を吊り下げているのでとても暖かい。夏になると、人びとは点在する泥包で生活を始める。草が芽吹いて川の流れがぬるむころ、遊牧民は再びここに戻ってくるのだ。パオに少し手を加えるだけで、すぐ住めるという。 移動生活に慣れ親しんできた蒙古族は多くが今も、伝統的なフェルト製のパオを使用している。取り外して移動できるこのパオは、北方遊牧民族の典型的な民居だ。作るのが簡単で組み立てやすく、寒さを防げるなどが特徴。その他の地域に住む蒙古族、東北地方のエヴェンキ族やダハール族、西北地区のハザク族やタジク族なども同じようなパオで暮らしている。ただ、大きさや形状はそれぞれにやや異なり、呼び方も違うものの、構造にそう大差はなく、パオをめぐる文化、祖先礼拝の遺風もその源は同じだ。 |