政府の立場から考えると、燃油価格調整は政府自体の負担を軽減する措置だった。政府の財力には限りがある。国民生活を援助する政策の一連の強化と度重なる自然災害は、中国の財政支出を拡大してきた。燃油価格の引き上げは財政圧力をある程度緩和し、政府財政のより合理的な利用を促すものとなるだろう。
エネルギー価格の引き上げが中国の産業構造調整に与える影響も大きい。具体的には、中国石油(ペトロチャイナ)や中国石油化工(シノペック)など石油加工販売を行う上流企業へのプラス影響と、エネルギー高消費型企業へのマイナス影響だ。中国のエネルギー価格にはこれまで補助政策が取られてきた。国際市場の変化に応じて国家が補助金を供給する政策により、国内市場のエネルギー価格は一定に保たれてきた。しかし上流企業にとっては、生産を増加すればするほど損失が大きくなる状況となり、生産意欲が大きくそがれていた。一方、エネルギー高消費型企業の発展は抑制されてこなかった。エネルギーの莫大な消費によって利潤を得て、さらにコストを政府に負担させることができる仕組みは、産業構造全体にひずみをもたらしていた。エネルギー価格の調整は最初の一歩に過ぎない。将来は国際環境の安定を待って、価格統制を徐々に開放し、市場による価格決定メカニズムを実現していくことになるだろう。
今後の長期的な産業構造転換プロセスの中で、エネルギー高消費型の企業は徐々に市場から姿を消していくことになる。まず消費者がエネルギー低消費型の製品を選択するようになり、企業も自発的にエネルギー低消費型製品を生産するようになる。一方、エネルギー高消費型企業のコストはますます上昇し、損失を出すようになる。そうなれば技術を改善し、省エネ・排出削減能力を引き上げざるをえない。産業構造の合理的調整はこうして実現される。ただこのプロセスに伴うリスクも見逃せない。例えば、大型企業が特定産業における独占状態を強めることで、低価格の労働力と大量のエネルギー消費に頼っている大量の民間中小企業が破産し、民間経済がダメージを被ることなどだ。「予期した調整効果を実現することができているか」「技術革新を促すことなく、民間経済の発展を阻むだけに終わっていないか」といった問題は、産業構造の転換過程において注意深く観察していく必要がある。中国のこれまで30年の記録的な経済成長は、資源の低価格とエネルギーの高消費によってもたらされてきたものだ。産業構造転換に伴う問題は今後も慎重に見守っていかなければならない。(ORI国際産学研究 平霖 劉翔)
「人民網日本語版」2008年7月1日 |