全国日本経済学会常務理事 甘峰
日本は「京都議定書」を提唱した国であり、かつこれを先導する国である。国内のエネルギー資源が乏しいことに起因して、日本はエネルギーの多様化を発展させることを常に重視してきた。またこれと同時に、エネルギー利用効率の向上という面においても多くの努力を積み重ねてきた。再生可能エネルギーの技術的側面からみれば、日本はすでに世界の先頭を走っている。
しかし、低炭素型の都市は低炭素型の社会においてこそ真に根ざすものである。低炭素型都市を構築するためには、都市の市街形態・交通システム・土地利用そして空間の構成等の各方面から検討して、低炭素化のための中長期的な統一計画を策定する必要がある。
低炭素型都市の構築
しかし、日本政府の低炭素化に向けたアクションは、基本的に企業レベルに留まっている。都市計画レベルでみると、日本の現行計画に記載されている地域施設は主に道路・広場・公有の空き地等であって、コミュニティ(地域社会)のエネルギー設備については基本的に計画に組み込まれていない。つまり、低炭素型社会の構築を誘導するような計画は、未だ策定されるに至っていないのである。
日本のみならずEU加盟国においても、低炭素型都市の推進戦略が策定されている。「京都議定書」で規定された温室効果ガス排出削減目標に基づき、EUは「コミュニティ(地域社会)戦略」(Community Strategy)を掲げた。これは、低炭素型都市と低炭素型社会とを並行して推進していこうというものである。具体的には、都市の発展過程においてコミュニティ(地域社会)を主要な単位として、生活に必要なサービスは提供しながらも、エネルギー使用量(全体)を減少させかつ再生可能エネルギーの使用(割合)を増加させるというものである。たとえば、ロンドンは2005年に初めて5つの低炭素特別推進地区を指定し、それらの地区に対し以下の事項を要求した。まず第一に、エネルギー使用量の最も大きい公共施設・商業業務の領域において、大規模な再生エネルギー開発を推進すること。そして第二に、ロンドンにおいては住宅のエネルギー消費が消費量全体の45%を占めることから、住宅改善プロジェクトを都市開発計画中の重要項目として位置づけるべきこと、である。