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第6回 面会・会合の約束、招待
発信時間: 2008-11-05 | チャイナネット

日本の古い話で、「雨月物語」という本があります。これは上田秋成という人が書いた話で、18世紀に出版されました。この上田秋成は、中国の明清時代の白話小説も読んでいました。そして中国の小説を参照しながら、日本流にした話ですので、中国の人にも共感してもらえる内容もあると思いますが、日本独特の内容もあります。日本語・日本文化を勉強している中国の皆さんにも、是非読んで頂き、中国文化と日本文化との関連、相違などを考察していただきたいと思います。その中で「菊花の契り(ちぎり)」という話があります。それは当時のある武士が、自分の義兄弟と会う約束をしていたのですが、牢屋にとらえられて約束を守れなくなったので、自殺をして、幽霊が約束の場所に行ったという話しです。会う約束の日が9月9日で、菊の美しい季節なので、「菊花の契り」というのです。美しくも悲しい話しです。小学生の時この話を読んだ私はとてもこわい気持ちがしましたが、約束を守るということは本当に大切なことだと強い印象を受けました。

さて、私が以前ある国で勤務していた時、地方を旅行していて、ホテルに事前に予約を入れていたのに、ホテルに到着したら予約がキャンセルされていたことがありました。なぜかと言えば、首都からとても偉い指導者が来ることになったので、同行者のために、ホテルの部屋が沢山必要になり、私の予約がキャンセルされていたのです。日本ではこのようなことは絶対にありえません。天皇陛下でも総理大臣でもどんなに偉い人が同行者とともに来ることになっても、一般予約客に何の断りもなく、ホテルの予約がキャンセルされることはあり得ません。それは、予約はビジネス上の合意であり、約束だからです。合意、約束は、常に尊重されるのが、ビジネスでの常識であり、日本での常識です。

日本では、会合や面会の約束をすることは、とても重要なことです。

まず会合や面会の約束をする場合、最低2週間先の予定を調整するという感じでアポイントをとるのが常識的です。また、パーティー、文化行事などに誰かを招待する場合でも、できれば1ヶ月前、最低2週間前までには招待状を出すべきです。多忙なビジネスマンは、1ヶ月、2ヶ月先の予定がもうかなりつまっていることが多いようです。数日前に招待状を出しても、忙しい人は、既に予定がふさがっている場合が多いようです。

北京で働いていた時には、いろいろなイベントへの招待状が数日前とか前日にくることが結構多くて、戸惑いました。日本であれば、このような直前になって、招待状を送ることは、相手を軽視していると思われ、むしろ悪い印象を与えかねません。

一回アポイントをとったら、むやみやたらに変更すべきではありません。仕方のない事情がないのに、アポイントを変更すれば、信頼できない人とみなされます。変更する場合、事情を相手に説明すべきです。

中国から日本に帰国して、中国の知人達が日本を訪問するかもしれないという連絡をもらうことがあります。せっかく日本を訪問していただくので、食事にご招待しようと予定を組もうとするのですが、予定がなかなか事前に決まらないので、困ることがあります。日本で生活している華僑の友人から聞いた話ですが、中国から代表団を日本に派遣するので、受け入れをしてほしいという希望を連絡してくる場合があるそうですが、直前になって訪日は中止した、という例がよくあるそうです。そしてキャンセルに伴う料金は支払わないということです。これも日本人および日本で働いている華僑の人たちをかなり困らせます。

(井出敬二 前在中国日本大使館広報文化センター所長)

「チャイナネット」2008年11月5日

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