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清水由実氏:「人民文学を読む会」訪中団に参加して
発信時間: 2008-11-12 | チャイナネット

「人民文学」を読む会

「人民文学を読む会」は、文化大革命の終息により1976年1月に『人民文学』誌が復刊したのを機に、同年秋に発足した。現在、代表を務めるのは東洋大学教授で北京在住の横川伸氏。

日本では1968年ごろから日米軍事関係や当時のベトナム戦争、大学制度改革などをめぐり、現在「団塊世代」と呼ばれる戦後の民主主義教育を受けてきた若者を中心に、社会に対するさまざまな疑問の声があがり始め、いわゆる「全共闘」運動が起こった。これらの若者の中には「浅間山荘事件」などに代表される過激なグループも現れ、70年代に入ると運動も下火になり、若者たちの間には挫折感や倦怠感が漂い始めていた。

そのような中で、当時は日本とは全く異なる価値観を持つ、謎に満ちていた隣国中国に関心を寄せる、大学を卒業したばかりの若者や少し上の世代の中国研究者、中国関係の仕事に就く人々を中心に、76年秋に結成されたのが「人民文学を読む会」で、これまで30年以上もの間、毎月1回、読書会を開いてきた。

現在は設立当初のメンバーでは横川氏が残っているだけで、ほかのメンバーは90年以降に加わったフリーの通訳や翻訳者、定年退職者、教員、学生、主婦など、その職業は多種多様だ。

月1回の読書会では持ち回りで発表者を決め、直近の『人民文学』誌の中から短編小説と中篇小説を1篇ずつ選び、担当者がレジュメをつくって小説の概要を発表、全員でその小説について議論する、という形で進められる。現在のメンバーのほとんどは特に中国文学の研究者というわけではなく、ただ中国に関心を持つ人々であるため、1篇の小説をめぐる議論はいつのまにか現代中国論になったり、情報交換の場になったりする。

91年以降は、毎回各自が発表した作品について「読み易さ度」と「面白さ度」を評価するほか、各自が独自の尺度で評価し、その程度の高いものには5つ星をつけている。発表者独自の評価の中には「男の身勝手度」や「中年女性共感度」、「テレビドラマ風度」、「詰め込みすぎ度」などユニークな評価があり、この評価をつけるのが発表者の楽しみの1つでもある。こうした評価や簡単な内容紹介などは毎年1つの表にまとめて記録として残している。根気のいるこの作業を一手に引き受けているのは、90年から同会に参加している高木晶子さん。彼女はフリーで翻訳、通訳の仕事をしていた90年に同会の存在を知り、文学作品を通じて現代中国の生活を知ろうと参加したという。今回、各地で行われた座談会の際には、この年報が各作家や評論家の注目を集め、日本語で書かれたこの年報を食い入るように見る姿が見られた。

「人民文学を読む会」は、1999年に来日した中国作家代表団との懇談会を皮切りに、近年は中国の作家との懇談会も何度か開いており、2000年、04年、07年には訪日した周梅森、鄧友梅、陳建功、李敬澤などの各氏と懇談。04年12月には、『人民文学』創刊55周年記念活動の一環として同誌から「栄誉読者」証書を授与された。

一行は『人民文学』編集部を訪れ、現編集長の李敬澤氏(左)、元編集長の程樹臻氏(右3)、元副編集長の王扶氏(右2)と崔道怡氏(右)らと懇談

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