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清水由実氏:「人民文学を読む会」訪中団に参加して
発信時間: 2008-11-12 | チャイナネット

王安憶氏が今年の『人民文学』4月号に発表した中篇小説『黒弄堂』が「人民文学を読む会」の12月例会で取り上げられることになっていることから、担当者の矢口紘子さんから質問が出され、話は上海の「弄堂」をめぐって展開した。

『黒弄堂』は、「弄堂」と呼ばれる上海独特の路地・横丁を舞台に、自意識に目覚め始めた中学入学前の少年と小学校入学を前にした幼い女の子の姿を、特に少年の心の動きを中心に丹念に描いた作品。無邪気に少年につきまとう女の子に対して、入り組んだ路地のように揺れ動く少年の繊細な心が活写されている。日本人には具体的なイメージが浮かびにくい「弄堂」について、同じ「路地」でも整然としている北京の「胡同」と異なり、道が雑然と錯綜する「弄堂」とそこでの人々の暮らしぶりが王安憶氏、瀋善増氏などから具体的に説明された。

しかし、こうした路地も上海にはすでに数えるほどしか残っていないという。

「弄堂」について話す王安憶氏(左)。

右は「人民文学を読む会」代表の横川伸氏

今年9月にオープンしたばかりの上海環球金融中心(森ビル)の

世界一高い展望台(101階)から見た、それまでのノッポビル・金茂大廈(88階建て)

だが、今すでに環球金融中心を超える超高層ビルが建設中という。

今回の訪問を通じて

各地で現代の中国を代表する作家らと懇談し、日程を終えた訪問団に感想を聞いたところ、メンバーの北村亮介氏は、「上海には何度も来ているが、ビジネスで来ていたため、そこに“住民”がいるということを忘れがちだった。“弄堂”の話を聞いて、生活の息吹が感じられ、とても興味深く感じた」と語った。

また代表の横川伸氏は、「若い作家が育っているのをひしひしと感じると同時に、『人民文学』誌が若手作家たちの登竜門になっていることも強く感じた」と話した。

「弄堂」や「胡同」と呼ばれる路地で営まれてきた濃密な人間関係に支えられた暮らしは、ビルに囲まれた生活に取って代わり、人間関係がますます希薄になる中で、これから生まれる現代中国文学がどのように人間を描いていくのか、これから大きく変化すると予想される農村や農民を作家はどのような切り口で描いていくのか、ネットを通じて次々に生まれる新文学の旗手たちのうち、どのような書き手が残っていくのか、これからの中国文学をめぐる興味は尽きない。

「北京週報日本語版」より 2008年11月13日

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