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児童漫画家中沢啓治:人類にとって最高の宝は平和
発信時間: 2009-08-21 | チャイナネット

 

――「黒い雨にうたれて」は日本では、原爆をテーマにした最初の漫画のようですね…

 被爆者の青年が原爆の怨念をもって、悪徳商人のアメリカ人をぼんぼん殺していくハードボイルド調の漫画です。当時はまだ原爆を公にさせられない時代でしたから、発表するのに1年ぐらいかかりましたね。大手はみな、内容はいいんだけど、ちょっときついという。結局1年間、埃をかぶっていたんですよ。それで、ある日考えてみてね。誰かの目に触れられたらいいじゃないか。誰かが見て、何かを感じてくれればいい、と。そう思って、創刊して間もない青年誌「漫画パンチ」というところへ行った。そこの編集長がまたいい編集長で、作品を読んで、「載せましょう」と言ってくれた。幸い、評判がよくて、それで黒いシリーズを全部で6篇描いたんですよ。

――この流れで誕生した『はだしのゲン』は、今や世界各国の言葉に翻訳され、出版されていますね。

 感動です。わが息子が立派に成長した気持ちでいっぱいです。当初はただコツコツと描いただけで、こんなにたくさんの人に好かれて、ファンになってくれるとは思いませんでした。


世界各国言語に翻訳された『はだしのゲン』

――いま、『はだしのゲン』の英語版をオバマ米大統領に届けようと運動しているようですが…

 オバマ大統領のチェコのプラハでの演説を、翌日新聞の記事で読んだ。歴代のアメリカ大統領は、みな、正義のために原爆を投下したという論調ばかりで、信用できないなと思っていました。ところが、オバマさんは、アメリカが加害者だとはっきり言うし、核兵器をなくしていかなくちゃいけないという演説をしました。それを聴いて、あの人は信頼できる人間だと思って、ぜひオバマさんと2人のお嬢さんに英語版を読んで考えてもらって、次の世代へバトンタッチしていきたいです。

 オバマ氏に送る色紙の中には、私は「人類にとって最高の宝は平和です」、と書きました。何よりも、核大国のアメリカの市民にこの作品を読んでもらいたいですね。多くの人に読んでもらって、次の世代にもぜひ読んでもらいたい。

■日中の平和交流を期待

――原爆の被害がテーマの『はだしのゲン』ではありますが、同時に、戦争の多面性、とりわけ、日本はアジア各国では加害者の立場にあった歴史をしっかりと踏まえていました。

 ぼくは歴史を知らないといかんと思います。日本の戦争の歴史を振り返ってみると、もう残酷なことをしていますよ。韓国でも。中国でも。

 だけど、思想統一というか、小学校1年の時から、日本が唯一の正義の国だという軍国教育を叩き込まれました。中国人だの朝鮮人だのが人間じゃないという見方を植えつけて、生徒を、平気で人を殺していく人間にしてしまう戦前の教育の恐ろしさ。

 ぼくは、日本人が被害者ぶるのではなく、ほかの国で何をしたのかも知っておく必要があると思います。

――これらの日本と中国に向けてのメッセージは。

 『はだしのゲン』を描くために、中国の戦争の歴史を調べつくしました。南京虐殺の資料が出てくると、なんと日本人がひどいことをしたのかというのが出てくる。やりきれない。申し訳ない気持ちでいっぱいになります。戦前、日本人は日本が中国大陸で何をしたかを知らない。戦争の実態を知っていない。そういうこと、日本が反省していない。

 いま、日本国内では、憲法9条を改正しようという動きがあるが、ぼくは、日本は戦争をしない平和国家であること、そして、非核三原則の精神を守らなければならないことが根本だと思います。

 これからは、日本は中国の人と仲良く手を取り合って、平和外交で行きましょう、そういう世代を育てなくちゃいけない。次の世代で仲良く手を取り合って、お互いの国の交流をしたいです。

 

 「中国国際放送局 日本語部」より2009年8月21日

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