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東アジア共同体構築に向けた2つの道筋
発信時間: 2009-10-10 | チャイナネット

作者:周永生 丁安平

周永生

外交学院国際関係研究所教授・中華日本学会理事

日本政策研究院大学客員研究員

日中環境協会副会長、東亜和平・発展研究センター特約研究員

中国日本経済学会理事、中国日本史学会理事

 中国・日本・韓国3カ国の首脳会談が2009年10月10日、北京で行われる。今回の首脳会談では東アジア共同体構築に向けた動きが最も注目を集めているが、東アジア共同体構想は中日韓3カ国がいずれも重視するテーマになりうるだろうか。どのような道筋や方法で東アジア共同体構築を推進することができるだろうか。将来東アジア地域の協力の中で主要チャネルになりうるだろうか。これらの疑問に対する答えは、今回の首脳会談開催につながった以下の6つの地域的・国際的背景と密接に結びついている。

(1)世界金融危機発生後、各国の経済は程度の差こそあれ打撃を受けた。現在回復傾向にあるものの、その足取りは依然緩やかで、今後の道のりも困難に満ちている。中国経済は明らかに好転し始めているが、多くの不確定要素を抱えている。日本経済の回復は力強さに欠け、民主党が政権獲得した後も国民は日本経済の将来に不安を抱いているため、株式市場では大幅な下落を記録した。韓国経済は今年下半期に回復傾向に入り、好転の兆しが現れている。

(2)2008年12月、東南アジア諸国連合と中日韓3カ国(ASEANプラス3)の枠組み以外で初めて、中日韓による単独の首脳会談が福岡で行われたのを機に、3カ国首脳による定期会合がスタートした。これにより、中日韓3カ国と東アジア地域の協力のための新たなチャネルが切り拓かれた。また、日本の小泉元首相が政権の座を降りて以降、中日韓3カ国の関係は次第に好転し、大きな混乱も起きず改善傾向にある。特に、このほど発足した民主党・鳩山内閣のアジア回帰の政策や東アジア共同体構築を目指す姿勢は、中日韓3カ国関係の発展と東アジア地域の協力に新たな活力をもたらした。

(3)金融危機の中で、3カ国は交流と協力の強化を可能にし、その協力関係はエネルギー・環境、通貨互換措置拡大、感染症流行防止、防災・災害救援などの分野に及んだ。こうした取り組みはアジア経済の安定促進に寄与しただけでなく、相互信頼を積み重ね深め、3カ国の関係の持続的かつ良好な発展の基盤を強化した。

(4)中日韓3カ国の国力の対比に著しい変化が生じており、中国は今年から来年の2年以内に国内総生産(GDP)が日本を上回り、世界第2位の経済規模を有する経済大国になると予想されているが、日本と韓国の経済の実力は中国に比べ下降傾向にある。日韓両国の経済は回復し、金融危機の苦境を脱したが、海外市場では主に中国市場の弾力性のある需要に依存。米国、欧州連合(EU)東南アジア市場の重要性は相対的に低下している。中日韓3カ国の経済の相互依存関係は、これまでで最も緊密になっている。

(5)北朝鮮の核問題をめぐる交渉は同国の核実験実施により行き詰まり、6カ国協議が休止に追い込まれたため、北東アジア地域の安全に対する不安を拭えず、効果的な安全保障メカニズムを構築できないでいる。中日韓3カ国にとって、北東アジアの安全は自国の利益と関係していることから、事態の好転に向け努力を続けている。

(6)東アジアの地域的協力の問題において、既存のASEANプラス3、ASEANプラス6の協力体制はある程度の効果をあげているものの、人々の期待を大きく下回っている。東アジア地域の経済協力がこれまで大きな進展を遂げていない状況から、既存の協力体制自体に重大な欠陥が存在することがうかがえる。要因の1つはASEAN加盟国がこれら2つの協力体制で主導的な立場にあるが、これらの国々の国力、国情、インテリジェンス面の後ろ盾がいずれもこうした協力体制を支え十分に役割を果たすだけの条件を満たしていない点だ。このため、中日韓が主導的な役割を担うべきとの声が次第に高まってきている。

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