また、出資比率が楽天51%、百度49%ということ(さらには、看板・ブランドを楽天だけにしていたこと)であったことも、大きく考慮すべきでありまして、資本面からだけですと百度が楽天に「本気で」貢献するべき構造になっていませんでした。もちろん、これは中国ビジネス開始時に双方が相当の協議の上、落ち着いた割合なのだとおもいますが、このインセンティブ構造にも問題があったのだろうと思います。楽天がブランド力を維持する上で、オーナーシップやブランド名を維持するベネフィットと、百度からのリソースを割いてもらえないかもしれない(百度にインセンティブが働きにくいかもしれない)デメリットを検討した上でこの割合をだしているのだとしたら、もうすこし百度側に「この共同ビジネスをがんばらないとあなたがたも苦しくなるよ」というバーゲニングパワーが必要だったでしょう。例えば、百度は日本市場に進出していますから、楽天が強い日本市場において百度とより他方面で提携をしていって、百度は楽天がなければ日本市場で生きていけない、というレベルまでもちこんでいれば、中国市場でも百度は「もっと本気になって」楽天を支援したかもしれません。
いずれにしても、今になっては後の祭りでありますが、僕のみるところでは、「百度へのインセンティブ構造の欠陥」「バーゲニングパワーの不均衡」「楽天の現地化能力の欠如(国際化といいつつ現地法人上層部の中国人割合が少なかった)」等などが楽天の中国ネットショッピング事業の敗因でしょう。楽天自身が撤退時に敗因を「過度な競争が存在した」と主張してしまった事こそ、まさに当時の楽天中国事業部の情報収集・分析力不足の最たる例なのではないかと思ってしまいます。
中川幸司さんのブログ「情熱的な羅針盤