林国本
最近、上海万博の話題をよく耳にすることになった。上海市のトップが「収支はトントンとなると思う」と語ったということが日本の新聞で伝えられている。私見であるが「収支がトントン」なら、これは大成功と言える。
日本の雑誌は、新幹線の営業開始、東京オリンピック、大阪万博を「通過点」として日本も大きく変わり、世界第二の経済大国となったと述べている。中国も高速鉄道の建設、北京オリンピックという「通過点」を順調に乗り越えて、今回は発展途上国ではじめての上海万博の開催にこぎつけた。もちろん、日本は百数十年らい近代化の道を歩んできたのだから、中国と同列視することはできないが、「通過点」を乗り越え、次なる発展段階を目指すという点では、相似点がないわけではない。
最近メディアにおいても、日頃のおつきあいにおいても、低炭素社会、省エネという言葉をよく耳にするようになった。これも上海万博の一部パビリオンの建設のメーンテーマとなっている。中国の国民の間でも、こういう面での意識の向上がはっきりとみてとれる。それ以外に国外旅行に行かなくても、すぐそばで世界各国、各地域のことを知ることができ、いろいろなエンターティンメントを観賞することができる。スペイン・デーでは、本場のフラメンコを観賞することができ、アフリカのいろんな踊りも勘能できる。上海万博は世界各国、各地域の学びあいの場のみでなく、フェスティバルの大会場でもあるわけだ。
北京もオリンピック以降、だいぶ良い方へ変わりつつある。私が三千年の文明を誇る国として恥ずかしいことだと思っていた、バスの中での口喧嘩も目にしなくなった。民度の向上とはこういうことかもしれない。ボランティア活動で何万という若者が「国際化」の勉強をしたことも、この若者たちが中年にさしかかったときにその効果が現れてくるにちがいない。上海万博は半年間に及ぶもので、その学習効果はさらに大きなものとなろう。
上海の主催側も、なにしろ初体験なので、粗相のないよう何度もシミュレーションをくりかえしたようだが、この約半か月の状況からみると、入り口やセキュリティチェックの施設での混雑を避けながら、もうすこし予約チケットを増やしてもいいのではないだろうか。