環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉は現在まで7年弱続けられており、年内にも交渉が終了する見通しとなった。しかし31日付日本経済新聞によると、フィリピンのドミンゴ貿易産業相は30日、アキノ大統領が率いる現政権がTPPの交渉に加わらない方針を表明した。
アキノ大統領は2010年に、TPP加入の意向を表明していた。新興市場国の一つであるフィリピンは、TPPがもたらす貿易のチャンスに興味を持っていた。しかしフィリピン政府の最近の発表は、意外な内容だった。TPP交渉が終了に最も近づいた段階に、これまで積極的な姿勢を示していたフィリピンが突如撤退を発表したのはなぜだろうか?
フィリピン政府は、法律改正の作業が間に合わないとしている。しかしアナリストは、フィリピンがTPP撤退を選択したのは、それほど大きな利益がもたらされない可能性があるからだと分析した。
アナリストは、「高基準・高品質かつカバー範囲の広い総合的な自由貿易協定であるTPPは、フィリピンという産業構造がロー・ミドルエンド産業に偏った発展途上国にとって、先進国が得意とする産業から国内市場が圧力を受ける可能性を意味する。国内産業の発展の余地も、狭められる可能性がある」と推測した。
推進力を欠くTPP
開発途上国が得られる利益は限定的であるかもしれない。アナリストは、TPPは開発途上国の輸出を促すが、実質的には先進国側にとって有利だと指摘した。TPPは先進国のハイエンド産業・サービスの比較優位を際立たせる。国際貿易に長期的に存在する「ハサミ状価格差」によって、開発途上国は自由貿易から損失を被ることもありうる。開発途上国にとってTPPは一つのチャンスだが、罠になる可能性もある。
先進国間の苦しい駆け引きも、TPPの貿易の壁を打破するという理念の試練になっている。共同通信社の報道によると、米国のバイデン副大統領が安倍首相の訪米前に、日米2国間協議を決着させたいとの意向を示した。しかし安倍首相は訪米中にTPP問題の協議をする意向で、かつ訪米中に「必要なき妥協は絶対にしない」と強調した。加入国のうち最大の2つの経済体である日米両国の苦しい駆け引きは、TPPの貿易の壁の打破がさらに長期化する可能性を示した。
最近の「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」ブームは、各国の経済協力の開放性とウィンウィンに対する注目を反映した。アナリストは、AIIB初期創設メンバーであるフィリピンの選択は、開発途上国にとってのTPP交渉の魅力が低下していることを示したと指摘した。「AIIBブーム」はTPP交渉の加速を促しているが、フィリピンの意外な撤退は交渉の先行きに暗い影を落とした。日本経済新聞が、フィリピンのTPP撤退は、「日米を中心にTPPの推進力を欠く現状を映し出す」と論じたのも無理はないことだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2015年4月2日