米国が盗聴を行っていた国を挙げると、フランス、ドイツ、イスラエルなど、長いリストになる。これらの国は強く抗議したが、その後はうやむやになった。これは世界の警察、超大国の米国が、実力を頼みに勝手な振る舞いをしていることを意味する。今回は、日本の番となった。ウィキリークスは7月31日に多くの文書を暴露し、アメリカ国家安全保障局(NSA)が2007年より日本政府の高官、三菱を含む多くの大企業の通信を盗聴していたことを明らかにした。
欧州のフランスとドイツは、逆鱗に触れることも顧みず米国に文句を言ったが、日本にはその勇気がなかった。これは日本が、フランスやドイツよりも米国に借りがあるからだ。大西洋を挟んだ両岸の関係は、NATOによって維持されている。これは地政学に基づく安全保障の同盟だ。欧州各国は冷戦時代、旧ソ連という強敵に睨まれ、米国主導のNATOに地域安全を委ねた。しかしながらシャルル・ド・ゴール大統領時代のフランスは、独立・自主的な声を出したことがある。フランスとドイツを中核とする欧州は、独立と自主に向けた努力を続けており、欧州が国際政治・経済秩序の一極として力を発揮することを願っている。
そのため米国がフランスとドイツの首脳の盗聴を行っていたのは、米国がこの欧州の2強を信頼していないからと言える。両国は抗議をし、米国に説明を求めた。これは両国の米国に対する一貫した自主性を示している。
米国が日本の高官と大企業の盗聴を行っていたのは、同じく日本に対して気がかりなことがあるからだ。そのうち最も重要な原因は、日本の国家戦略の位置付けだ。日本は米国のみに従い、米国の庇護を受けながら利益を手にしなければならない。安倍政権になると、この戦略的な需要がかつてないほど強化された。安倍首相の歴史観は、米国から放任された。その安保関連法案は、米国から支持された。中国との東中国海における島嶼の主権、油ガス田の開発をめぐる争いでも、米国は暗に日本の後押しをしている。米日の新たな同盟関係により、安倍政権の正常な国になるという取り組みは、かつてないほどの進展を実現した。
米国を後ろ盾とすることでこれほど多くの戦略的な利益が得られるのだから、米国が高官や経営者の盗聴を行っていたからといって、大騒ぎするには値しない。これは日本の政界の基本的な考えかもしれない。日本は得失を考え、我慢したのだ。
日本には米国に楯突く力がない。日本がフランスやドイツのように強く抗議すれば、米国は歴史や慰安婦の問題で「正義」を主張するだろう。そうなれば日本は北東アジアで、より苦しい立場になるだろう。特に戦後70年という敏感な年に、米国が安倍談話に少しでも不満を表明すれば、安倍首相の歴史に関する努力も水の泡になる。
これが米日の新たな同盟関係の現実だ。日本は米国の力を借り、北東アジアの地政学の駆け引きで、中韓などの隣国からうまい汁を吸っている。「恩人」の盗聴を気にしすぎるはずがない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年8月6日