韓日の外相は12月28日、慰安婦問題を巡り協議し、歴史的な和解と合意に達した。これは一時、国際社会から注目を浴びた。日韓両国の急に見える和解の裏側には、複雑な原因がある。今回の合意は、安倍政権の本心によるものとは言えない。安倍政権が歴史問題で良心を取り戻したというよりは、双方の和解はやむなきこと、その場しのぎだったと言える。
日韓両国が合意に至った最大の原因は、米国の圧力だ。日韓は米国のアジアにおける最も重要な同盟国であり、米国のアジア同盟関係の構築で重要な力を発揮している。しかしながら日韓両国は歴史や領土などさまざまな問題で対立を続けており、中国を念頭に置く米国と日韓の三角形の同盟関係の構築を遅らせていた。韓国は日本との関係が冷え込む一方で、対中関係を促進した。中国の抗戦勝利70周年軍事パレードで、朴槿恵大統領が自ら訪中し、中韓自由貿易区の交渉が成功裏に終わった。これにより中韓両国は政治・経済の各分野で、いわゆる「蜜月期」に入った。合意後、米国は真っ先に慰安婦問題の合意を「歓迎する」と表明した。これはまさに、米国が最も強く願っていたことだ。国内の抗議の声を受け、朴大統領は国民に対して大局を重視するよう呼びかけ、外からの圧力を示唆した。米国が強く働きかけたことは明らかだ。
安倍政権は隙を突き、最小の犠牲により慰安婦問題を解決しようとした。韓日の合意内容によると、韓国政府が元慰安婦支援の事業を行うために設置する新財団に、日本政府が10億円を拠出することになる。合意内容は、日本政府が当時の犯罪の首謀者だったという事実を明確にせず、あいまいに処理し、「謝罪」という表現を避けた。韓国が長年続けてきた努力が手にしたのは、限りある外交の成果と言える。安倍政権は協議により、日韓の同問題の対立を終わらせ、中韓の仲違いを煽ることで、中日韓の三角関係における積極的な地位を占めようとしている。韓国との和解は、安倍首相の国際社会の輿論戦における「各個撃破」戦略として見ることができる。中韓両国は日本が慰安婦の歴史的事実を否定していることを受け、慰安婦の記憶遺産登録を共同申請しようとしているが、日本は今回の和解により中韓の分裂と瓦解を狙っている。中国の「南京大虐殺文書」の登録成功は、日本を強く刺激した。安倍政権は慰安婦問題の登録を阻止するため、あの手この手を尽くしたと言える。
「無理にもぎ取られた瓜は甘くない」ということわざがあるが、日韓の和解に向けた合意には再び変化が生じる恐れがある。慰安婦問題は人権と国民の尊厳に関わる重大な問題で、慌ただしく取りまとめられた合意で無にすることはできない。双方が誠意を持ち、歴史の重荷を下ろして初めて、慰安婦問題による傷を乗り越え、真の和解に至ることができる。日本の現政権は同問題の和解に対する誠意を持たず、被害国の分裂により歴史の責任を逃れようとしているだけだ。中国を含むアジア諸国にも多くの被害者がいるが、日本政府はこれを無視している。米国の圧力と自国の外交の利益のためにダブルスタンダードを設定し、韓国と一方的に和解する行為は、その他の被害者をからかうようなものだ。韓国の被害者と国民も、合意内容に強く反発しており、日本政府には誠意がなく、韓国にとっては外交的な屈辱だとしている。慰安婦問題が長期化しているのと同様、徹底的な解決にも時間が必要だ。議論はなおも続き、変化が生じる可能性もある。慰安婦問題の鍵は日本が握っている。日本政府が率直に歴史を見据え、歴史の責任を着実に担った時が、問題解決の時になる。(筆者:侯隽 外交学院国際関係研究所国際関係博士生)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年12月31日