日本の自民党は最近、「新成長戦略」の骨子案をまとめた。従来の景気刺激に焦点を絞り及び産業振興を重視する戦略と異なり、今回は「経済政策及び企業活動」と「安全保障がシームレスでつながる」という、いわゆる「経済安全保障の視野に基づく投資戦略」を重視すると明記した。すなわち今後の経済成長、産業振興、企業投資などを、国防安全、軍事保障、けん制力などと効果的に結びつける。日本の関係者は、これを令和版の「富国強兵策」と呼んでいる。それではこの新成長戦略の実施の先行きと実際の影響はどのようになるのだろうか。
まず、新成長戦略は国の動向に対する日本の政界の危機感と焦りを浮き彫りにしている。バイデン大統領による国際協調と同盟国との協力を積極的に促進し、世界的及び地政学的な影響力を取り戻し、中国けん制を拡大する数多くの試みを受け、日本の政界の一部は既存の経済的な立ち位置では日増しに複雑になる国際的な駆け引きに対応できず、既存の経済モデルでは変化を続ける二国間・多国間外交を支えられないことを意識した。また新型コロナウイルスワクチンの研究開発、ハイエンド産業技術、経済発展の潜在力の危機感を抱くと同時に、中国と米国による大国の駆け引きにおける地政学的な焦りを感じている。
これにより彼らは、新しい戦略により「経済重視、安保軽視」「協力重視、けん制軽視」という経済と安保が相対的に乖離した現状を修正し、経済成長に国家安保に奉仕する役割を演じさせるべきと考えている。経済成長と安保の駆け引きを一つに合わせる大きな戦略的調整を行うべきだというのだ。
次に、新成長戦略は朝野に、経済は地域安保に奉仕するという新たな意識を形成させる。日本の一部の政治エリートは、日本にはこれまで長期に渡り経済優先と協力の利益を求める傾向があり、常に経済と安全を切り離して考えていたが、これにより日本は常に経済的要素に縛られたと考えている。今回の新成長戦略が熱心に議論されている大きな原因は、日本が「経済の底力により国の外交と安全保障を支える」という変化を直視し始めていることを反映したことにある。新成長戦略は、ハイエンド半導体を始めとする産業の優位性により国家安全を支えることを明らかにし、国内産業が輸入ハイエンド半導体に過度に依存する苦境を変えることを強調した。安定供給により国内の研究開発及び生産能力の建設を支え、かつ米日台企業による共同研究開発の新たな枠組みを構築するとした。
新成長戦略はさらに、「経済成長と防衛費の連動」のシグナルを発し、防衛予算は対GDP比にこだわる必要はないとした。防衛費は日本の安保戦略及び能力と関わるだけでなく、米日同盟や米日印豪などの二国間・多国間安保枠組みの強化の重要な現れだとした。防衛費の対GDP比の重大進展を促進する姿勢が明記された。
最後に、新成長戦略は中露などの地政学的な競争相手に矛先を向けることを隠していない。骨子案は、中露が協力する流れが絶えず形成されているとし、中国の日本の海域及び台湾環境に対する圧力、南中国海などの海域における海空パワーの誇示、経済力による地域安保の基礎固めなどを誇張した。これを口実に、日本は安全と経済を切り離すという古い発想を見直し、経済と安保の両面で中国と駆け引きを展開する主導権及び抑止力を拡大すべきとした。さらに中日の防衛予算の格差が4倍に拡大したといった現実を直視し、安全保障の視野に基づく対中経済政策を早急に策定すべきとの声もある。
どのような成長戦略を打ち出そうとも、それが自民党及び日本政府の権利であることは確かだ。しかし本質的に論じると、今回の新成長戦略はどう見ても日本が米国側に立ちその代弁をしているようであり、また米国に協力し産業及びテクノロジーで中国を抑制しようとする意味合いが満ちている。このやり方がそもそもグローバル化や多国間主義などの地域協力の理念に背くことはさておき、本当にこの道を歩み続ければ日本は長年により模索・形成してきた経済外交の主導権、対外協力の柔軟性を失い、日本の経済界に実質的な損失と投資の余計な困惑を招く。中日の政治的な相互信頼をさらに損ね、両国の民意を傷つける。日本は最終的に、自らその苦しい結果を受け入れることになる。
歴史を戒めとしなければならない。経済と安保を結びつけた「国民皆兵」の流れは、日本が同じ轍を踏むのではとの懸念をいっそう抱かせる。平和的発展と協力・ウィンウィンの旗印を高々と掲げ、平和的発展の道と善隣を堅持し、中国などの国と共にRCEPや中日韓FTAなどの地域一体化メカニズムを推進する。これが日本にとって、最も自国の国策と長期的な利益に合致する選択であることは間違いない。(筆者・笪志剛黒竜江省社会科学院北東アジア研究所所長・研究員、北東アジア戦略研究院首席専門家)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年5月31日