米大統領選の終了に伴い、世界の地政学及び経済構造が深い変革期を迎えている。東アジアは今後5−10年にかけて、世界の新たな経済一体化の重要な見所になる可能性がある。中日韓がチャンスを掴み、経済・貿易協力の新たな進展を実現すれば、自身の発展を促進するだけでなく世界経済の新たな構造に影響を及ぼすことになる。
中日韓の経済・貿易協力は現在、重要な挑戦を迎えている。1999年に中日韓協力メカニズムの運用が始まってから、3カ国の貿易額は1300億ドルから23年の7000億ドルに拡大し、アジア生産ネットワークの中心地になった。ところが制度的計画の欠如とその他の多くの要因が重なり、協力の安定性は依然として低い。23年の3カ国間の貿易依存度は20%未満。これを背景とし、3カ国はこれまで以上に緊密な協力により、外部からの挑戦に共に対応する必要がある。中日韓自由貿易協定(FTA)の交渉加速は現在の重要任務だ。研究によると、自由貿易圏の設立により3カ国のGDP成長率が0.5−3%上がる。
中日韓自由貿易圏の構想は02年に発表され、12年に正式な交渉が始まったが、16回の交渉後も合意に至っていない。米国新政権の「アメリカファースト」戦略は、FTAの推進に契機をもたらす可能性がある。中日韓は24年5月の共同宣言を実行に移し、交渉を加速するべきだ。
3カ国は高水準の自由貿易圏を建設する誠意を示し、RCEPを基礎としCPTPPのやり方を参考にするべきだ。物品貿易自由化について、95%以上の商品の関税撤廃を目指す。医療、介護、製造業などの分野でリストを発表する。高基準のデジタル貿易ルールを形成する。
中日韓の経済・貿易協力はRCEPの実施効果にとって極めて重要だ。3カ国のGDPがRCEPに占める割合は23年に80%を上回り、貿易額の70%を占めた。今後3−5年はRCEPの全面的な発効の重要時期だ。3カ国は自由貿易や市場参入などの重要議題における進展をけん引し、産業チェーンの効率を高めるべきだ。
中国はすでに、ASEANに向けた一方的な開放措置を摸索する意向を示している。中日韓はASEANとの経済技術協力を共同で推進できる。日韓のRCEP原産地ルールの利用率は50%を上回るが、ASEAN諸国は3%のみ。3カ国は重点分野の能力建設リストを作成し、ASEANの工業化を促し、中小企業の協力能力を強化できる。
サービス貿易は中日韓の新たな成長源だ。中国は日韓最大のサービス貿易市場だ。今後5−10年に渡り、中国の消費構造の高度化に伴い、サービス貿易が急成長を迎える見通しだ。中日・中韓・日韓のサービス貿易が占める割合は21年に世界平均水準を下回った。この水準に達すれば、1兆4000億ドル規模の市場が創出される。
医療・ヘルスケア産業を例とすると、その共同市場の建設を積極的に促すべきだ。中国は医療・ヘルスケアの市場規模が大きく、政策の開放的な趨勢は中日韓の協力掘り下げにかつてないチャンスをもたらした。
中日韓はサービス貿易と投資ルールの新たな開放を実現し、透明な越境サービス貿易ネガティブリストを作成し、サービスの壁を減らし市場のルールの結合を促すべきだ。製造業を例とすると、3カ国は各自の強みを活用し、製造業産業連盟を構築するべきだ。
中日韓は市場とルールを基礎とする自由貿易の受益者であり続ける。消費の需要が低迷するという挑戦を受け、開放的な市場が共同発展の鍵となっている。一方的な規制は無益であるばかりか、むしろ地域産業チェーンの不確実性を増す。そのため中日韓は戦略的な自主性を強化し、デカップリングとチェーン寸断のリスクに警戒し、より大きな市場開放を促進するべきだ。(筆者=遅福林・中国(海南)改革発展研究院院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2024年11月19日