国際情勢の複雑な変化を受け、アジア太平洋及び欧州における米国の一部の同盟国は「核共有(ニュークリア・シェアリング)」メカニズムに目を向けている。しかしよく耳にする「核の傘」とは、本当に安全を保障できるのだろうか。
冷戦中、ド・ゴール仏大統領はケネディ米大統領に魂の問いかけを発した。「ソ連が欧州に進攻した場合、米国は本当にニューヨークを犠牲にしてまでパリを守ろうとするだろうか」。NATO枠組み内の欧州の同盟国を安心させるため、米国は多くの措置を講じた。近年は弾頭と軍機を更新し、地上発射型中距離ミサイルを配備し、基地を改修し、核兵器の軍事演習を実施するなど忙しくしている。しかし欧州人の心からは不安が払拭されていない。特に米国の「トランプ2.0」が再来すると、「ド・ゴールの問いかけ」の答えは言わずとも明らかになってきている。米国との「核共有」を求める日韓などの国は「ド・ゴールの問いかけ」の警告を忘れるべきではなく、「NATOのアジア太平洋化」や米国の安全に関する約束に対して冷静な認識を保つべきだ。
米国は「拡大抑止」の効果について言及するたびに、米国の「核の傘」がなければ核保有国がどれほど増えるだろうかと大げさに語り、米国の「核の傘」があるおかげで日韓独などが自国の核兵器を発展させる必要がないと称する。しかしこれはコインの表側に過ぎず、その裏側には「拡大抑止」の存在そのものがある。特に米国と同盟国の「核共有」そのものが、国際核不拡散メカニズムの礎を強く侵食している。
これは2つの非常に深刻な問題と関わる。まずは、核兵器使用権の譲渡という問題だ。NATOの「核共有」計画によると、欧州に配備される米国の核兵器は平時に米国がコントロール・保管するが、戦時中は同盟国の軍機に搭載され、非核保有国のパイロットによってコントロールされる。これは本来ならば核兵器を持たない米国の同盟国も核兵器の支配権を持ち、核保有国になることを意味する。米国がNATOの「核共有」メカニズムを日韓などの国に複製した場合、それはアジア太平洋が同じようなプロセスを迎えることを意味する。次に、「核兵器不拡散条約」の戦時中の有効性という問題だ。米国には、この条約は平和な時のみ有効であり、戦時中は無効になるという説がある。これは非常に恐るべき説で、衝突さらには戦争が生じる危険な時に、最も重要な防護柵の一つとされる条約が効果を失うというのだ。核共有と同条約の間の矛盾は、国際社会で広く指弾されている。既存の「核共有」エリアの外へのさらなる拡大は、国際的な拡散防止にとって決して良いことではない。
核共有が安全の共有を実現できないことは明らかだが、安全の共有を実現するにはどうするべきか。まずは共同・総合・協力・持続可能のグローバル安全観だ。国家間で相互の利益と関心事に配慮し、他人にルールを守るよう求めるなら自らもルールを守る。次に、核兵器の先制不使用を共に約束し、核兵器使用のリスクを最小にする。それから、国際核不拡散の準則を尊重・遵守し、抜け穴を利用し装いを変えることで集団内部で核兵器を拡散してはならない。(筆者=郭暁兵・中国現代国際関係研究院軍縮研究センター主任)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2025年3月18日
![]() |
![]() |
![]() |