観光、映画、音楽、アニメ、マンガなどをはじめとする日本の文化産業の市場規模は、とっくに数十兆円に達し、その莫大さは日本の狭い国土とは大違いである。面白いことに、日本の作品には、「中国文化」を売りとした文化製品がよく登場する。しかも、作品の大部分は日本国内に向けたもので、中国市場進出の計画はない。
しかし、中国文化が日本で人気があるのと異なり、中国の作品は日本市場でブームとはなっていない。先月、中国の大人気ドラマ『宮廷の諍い女(原題・後宮甄嬛傳)』が日本で放送され始めた。しかし、放送から2週間、日本で話題にならず、関連の宣伝や評論もメディアであまり見かけない。
中国文化の人気が高い国で、中国の作品がはやらない理由は何か
筆者の記憶では、中国の作品が前回話題になったのは、2008年の映画「赤壁」である。日本での興行収入は100億円に上り、中国本土を超えた。しかし、「赤壁」は中国、日本、韓国の共同作品で、制作段階で日本人の嗜好が考えられた。一方、中国の作品で同じ三国時代が題材のドラマ「新三国」の日本での平均視聴率はわずか2.99%だった。「新三国」と「宮廷の諍い女」は、中国の作品の日本での成績を実際に反映できる作品だと思う。
中国ドラマは日本の「風土」に合わない。日本のドラマは週1回、2~3カ月かけて放送され、全7~12話である。一方、「新三国」は95話、「宮廷の諍い女」は76話もある。これは多くの日本人が受け入れることのできない理由の一つである。また、「新三国」で日本人が好むキャラクターの存在感が薄いことも視聴者の不満を引き起こした。
これらの例は、中国の文化作品を世界に広める人たちにヒントを与えている。世界進出を考えているのであれば、計画段階で十分に調査し、目標とする市場のニーズとタブーを知らなければならない。「赤壁」が成功したのは、整った世界戦略があったためでもある。「華容道」などの内容に手を加えたことは中国で議論されたが、国際市場で成功を収めるのに影響はなかった。