現地時間の今月10日午後1時、スウェーデン・アカデミーは2013年のノーベル文学賞をカナダの女性作家アリス・マンロー(AliceMunro)に授与した。
中国で一番よく議論されるノーベル賞といえば平和賞と文学賞だ。今年のノーベル文学賞はカナダの女性作家マンロー氏が受賞した。ノーベル賞の波及効果で彼女の作品は本屋にずらりと並び、小さなマンローブームが起きるだろう。しかし、ガブリエル・ホセ・ガルシア=マルケス(Gabriel José García Márquez)やパブロ・ネルーダ(Pablo Neruda)のときような一大ブームを巻き起こしたり、村上氏の作品の販売部数に肩を並べるというようなことはまずないだろう。
もちろん筆者は東洋文学ファンの一人として述べているまでで、マンロー氏の作品が欧米諸国の人々の心を捉えたという事実を否定するものではない。しかしブックメーカーオッズで毎年のように上位にランクインしては受賞に届かない村上氏は、今回もまたどこか気まずい思いをしたに違いない。村上氏は政治的色彩の濃いノーベル賞よりも「一番大切なのは読者」だと早くから口にしているが、こうした彼の独特な自慢は『ノルウェーの森』が大ヒットしたときに特に目立った。作品のヒットが彼をますます不安にしている。「ノーベル賞よりも読者」という表現は一般的には理解されがたいかもしれないが、読者であれば彼の言葉に微塵の強情さを感じることもない。村上春樹という人物はそもそもそういう人なのかもしれない。
ノーベル賞受賞者のその後の生活リズムやプライベート空間の変化の大きさは、中国の莫言(モー・イェン)に代表される。受賞しないことは純文学者の村上氏にとって救いなのかもしれない。
村上文学ははっきりとした分かりやすい表現で、難解な表現や新語を詰め込むことはしない。それでいて読み終えると確かな心の洗礼を感じる。彼は彼が自負する文学や音楽、ひいては美食を意識させることなく自然に読者に届け、読み終えると誰もがもう一つの不思議な世界の扉を開く。この純粋さを求めるがゆえ、読者はノーベル賞受賞者の作品よりも、外界を意識せず自分だけを見つめる続ける村上氏の作品に惹かれるのである。
村上氏のある1枚の写真が印象深い。木々が生い茂る細道を一人黙々と走っていた。調べてみると彼はボストンマラソンを6回完走したという。孤独なランナーにとって、ゴールは彼方遠くにあるのではなく、道中目に写る景色にあるのかもしれない。
文章=謝偉峰
「中国網日本語版(チャイナネット)」