先日閉幕した大阪アジア映画祭で、大阪のスラム街釜ヶ崎を舞台に描かれた太田信吾監督の新作「解放区」が大阪市によって抹消された。映画の審査員は釜ヶ崎での全シーンを削除するよう求めたのだ。映画作品に介入する同市の手法は、釜ヶ崎というこの「日本一のスラム街」が抱える問題の深刻さを露呈することとなった。環球時報が24日伝えた。
米ABCの23日の報道によると、同作品はテレビ番組のディレクターである主人公の男が、同僚、そして恋人とケンカしたことが原因で職を失い、その後釜ヶ崎で暮らす青年の様子を映画化しようと奮闘するものの、様々な困難に直面して最終的には挫折してしまうという物語を描いた作品。作品中、釜ヶ崎のゴミだらけの小さな公園や人で溢れかえった生活ケアセンター、現地の麻薬密売人と薬物を売り買いする主人公の様子などが描かれている。太田監督は、大阪市にこれらの内容や格安旅館、ドラッガーといった釜ヶ崎独特の光景をすべて削除するよう求められたという。しかも、同市は60万の補助金を出して、要求を飲めば大阪映画祭で放映しても良いことを暗に示した。太田監督は補助金を受け取ろうとしなかったが、同市はこのお金を無理やり押し付けこの件をマスコミに溢さぬよう釘を刺したという。「あのシーンを削除させて釜ヶ崎の存在を隠そうとしているように感じられた」と監督は話す。
釜ヶ崎は大阪西成区に位置する。釜ヶ崎は旧称で、現在は萩之茶屋と呼ばれている。萩之茶屋駅から東一帯は日本屈指の「ドヤ街」で、大阪の人々は「あいりん地区」と呼んでいる。日本地図にも載っていないこの地区には約2.5万人の貧民が暮らしており、その多くが日雇い労働者や失業者、浮浪者、犯罪者、そして借金に負われて家族にも見捨てられた破産者である。暴力事件は後を絶たず、地元住民とヤクザとのケンカは日常茶飯事。道端で布団一枚で野宿している人もいれば、板や段ボールで小さな部屋を作って暮らしている人もおり、地域一帯に独特の雰囲気を漂わせている。