携帯電話やパソコンでメールをするとき、最近の人は「うれしい」とか「賛成」という気持ちをどう表現するのだろうか。そう、スマイルマークをポンと一押しするだけだ。それですぐに相手に気持ちを伝えることができる。顔マークは、表情がとてもわかりやすく操作もきわめて簡単。スマートフォンなどの愛好者の間で、わずか数年のうちに「公用語」になっている。簡単なアイコンで抽象的な概念を伝えるのが現在の流行で、インターネット上での交流に「革命」をもたらしている。
「千の名句」は「ワンタッチ」に如かず
パソコンのキーボードの左上に『~』というキーがある。この符号は3000年前の古代ギリシャが起源とされ、英語の文章では「約、おおよそ」に意味として使われる。しかし今の若い人たち、特に30歳以下の「ネット達人」たちにその意味をたずねると、ほとんどの人が「たのしい」という言葉として使っているという。実際、ツイッターなどの交流サイトでは、喜怒哀楽が多くのアニメマークで表現されている。
この顔マークの起源は日本にある。英語でemojiと表記されるが、日本語を音訳したもので、絵文字の意味である。最初日本の携帯電話で使われて人気となり、その後、アップルが2011年にiOS5入力を発表し、これ以降全世界に広がった。現在では多くの顔マークが、ほとんどのコンピュータシステムの間で、互換可能なユニコードに登録され、交流サイトで広く利用されている。
現在絵文字には数百の種類があるといわれている。喜怒哀楽を表すアニメ顔のほか、サイン、家、交通手段、旗、紙幣、食べ物、植物、動物など多種多様な絵文字がそろっている。どの絵文字も一目でその意味がわかる。絵文字の魅力は、百万の言葉を使って表現する以上の感情を、マークをタッチするだけで伝えられることだと多くのネット愛好者は言う。またある言語学者によると、顔マークの使い勝手のいいところは顔の見えない相手と交流するときに、言葉のニュアンスを和らげる効果があることだという。怒った気持ちを表現するときでも、ストレートな文章を送るより、眉毛を三角にしたアニメ顔を送った方が、角がたたないですむ。
世界的なブーム
米国の研究センター2010年の調査によると、現代人におけるコミュニケーション手段の第1の方法は、携帯電話によるショートメールであり、実際に会って話すという方法は3番目だった。また2013年の別の調査では、メールで絵文字を使うかどうかとの質問について、米国人の74%と中国人の82%が「使う」と回答した。このほかツイッターで最もよく使われるスマイルマークの1日の利用数は4億7000万回にも達するという。あるネット達人は、顔マークを並べて米国のシンガーソングライター・ビヨンセの「Crazy in love」や、米国の小説「白鯨」を翻訳した。ロシアのある青年は顔マークだけからなるネットゲームを作り、人気を博している。
現在ユニコードに収められている顔マークの数は722に達しているが、この先さらに250以上が追加される見込みで、その中には雨雲、サングラス、遊び人風のサラリーマンなどもあるという。さらにスマイルマークの顔色はこれまで黄色だけだったが、ユーザーの好みによって、赤や黒、白などの選択も自由にできるようになる。