英ピアソンは8億4400万ポンドの価格で、フィナンシャル・タイムズ(FT)を日本経済新聞社に売却した。本件は海外で物議を醸しているが、英国内ではそれほど大きな騒ぎになっていない。
記者はピアソンが売却に関する情報を発表した後、FTに対して本件に関する意見を求めた。FTの広報担当者は、同社のウェブサイトの声明文に注意するよう、非常に平然とした様子で求めた。この声明によると、今回の取引はFTのオーナーが変わるだけであり、FTに変化はないという。
英国において、FTは最も高級な日刊紙だ。毎日購読するならば毎日2.5ポンドで、このお金があれば朝食をとるか、ロンドンの地下鉄で都心に行くことができる。多くの英国人がインターネットの無料の記事を閲覧しており、かつ英国には多くの無料の新聞・雑誌があるため、FTの部数は英国で伸び悩んでいる。これは公認されている事実だ。
1888年創刊のFTは、自社を「誠実な金融人」、「公正な株式仲買人」の友人と謳っていた。1950年代前半に西側の株式市場で株価が急騰し、FTの発行部数が急増し、英国で最も権威ある新聞の一つになった。英国と西側諸国が新たな金融危機を乗り越えたにも関わらず、ピアソンがFTを手放したのだから、その経営のリスクと圧力は想像に難くない。
英国の一部の人は、FTがより一般人にやさしい路線をとり、価格を1ポンド以下に引き下げることを願っている。FTも電子版という手段を利用しており、その購読者数は2012年に新聞の購読者を上回った。FTの現在の収入のうち、7割は携帯電話やタブレットPCから得られている。しかしながら電子版の購読費も安くはないことが問題だ。
FTの元記者・編集員は、自分たちでさえFTの電子版を購読しないと明かした。なぜならロイター通信やブルームバーグから、同じ情報を無料かつスピーディーに入手することができるからだ。多くのメディア関係者は、FTのマーケティングには特長と強みがあるが、運営コストが高額で市場から得られる利益も限定的だと指摘した。
記者が英国のメディア界・金融界・学術界を取材したところ、多くの人はオーナーが変わったことを理由にFTが「日本メディア」と冠せられることはないと判断しており、依然として非常に英国らしい大手の新聞だと信じていた。英国人がこのように考えることには、二つの理由がある。まずFTは世界市場に根ざして、伝統的な報道・分析の特長が現在の読者に受け入れられており、大胆な改革は誰にも不可能だ。次にFTの従業員は欧米、特に欧州の強い文化的背景を持ち、日本メディアが新たなオーナーになったからといって、日本人の好みや考えに迎合しようと考える人はほとんどいない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2015年7月31日