ブラジル北部の世界遺産であるセラ・ダ・カピバラ国立公園が、運営経費が逼迫する中、閉鎖される可能性が高まっている。同公園にはブラジルの最も昔の人たちが残した岩絵や居住の痕跡などの遺産が残されている。これらの発見は、従来考えられていたアメリカ人類の歴史が変えるとの見方もなされていた。
セラ・ダ・カピバラ国立公園は、ブラジル北部のピアウイ州にあり、その渓谷には950ヵ所ほどの線刻岩絵群がある。岩絵には当時の狩猟や戦い、子どもとの遊び、記念行事といった日常生活風景のほか、動物の姿なども描かれている。ブラジルの研究者によると、この岩絵が描かれたのは3万年以上前にさかのぼる。岩絵以外にも、150ほどの炊事器具や7000余りの道具も発見されている。3万2000年前の火鉢もあった。
放射性炭素年代測定などによると、ここに人類は今から10万年以上前に住んでいたとみられる。1991年、ユネスコはここを世界遺産に登録した。しかしこの世界遺産は今や“危機にさらされている世界遺産(危機遺産)”となっている。
経費問題が最大の問題である。カピバラ国立公園の面積は1291万4000平米。1200余りの遺跡とアメリカ人類博物館がある。
公園の毎月の維持費は40万レアル(1レアルは2元)ほどかかる。これまでは同国最大の石油会社が経費を負担していたが、2014年に不正スキャンダルが発覚。当初120万レアルを負担するはずが、わずか40万レアルまで減少した。公園を管理する人の数も激減。270人ほどいた施設管理者や発掘担当者などで現在もいるのはわずか30人ほどだ。
経費問題の結果、遺跡は十分な保護を受けることができず、岩絵の保存も深刻な影響を受けている。雨や昆虫の巣などによる被害のほか、岩が化学変化によって破壊される動きもでている。この結果、すでに一部の岩絵は消えてなくなっているという。
セラ・ダ・カピバラ国立公園があるピアウイ州はブラジルで最も貧しい地区のひとつである。政府は2014年にこのエリアに空港をオープンさせる予定であった。しかし現在まで実現しておらず、最も近い空港まで350キロも離れている。ある国際コンサル会社は「インフラが整えば、毎年500万人の観光客が見込める。しかし今は年に2万5000人しかいない」と話す。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年9月1日