チベット自治区ラサ市で5日開かれた、第2回チベット高原総合科学観測第1期成果報告会において、科学観測隊総隊長、中国科学院チベット高原研究所の姚檀棟院士は「この60年間で、我々は人類にとって未曾有の温暖化を経験した。チベットは世界の第3極で、気候変動に最も敏感な地域の一つだ。その気温上昇率は世界平均の2倍に達する」と述べた。
第2回観測は昨年正式に始まった。「地理的大発見」という第1回観測と異なり、今回はチベット高原に根ざす科学者が「変化」に焦点を絞り、チベット高原の地球システムの変化及びその影響という重要な科学問題をめぐり、そのメカニズムを解明した。またチベット高原の生態安全防壁体制の改善に向け、科学プランを提出した。
姚氏は「学生だった70年代に初めてチベット高原を訪れたが、今よりも乾燥し植物も多くなかったような気がする。分かりやすく言えば、チベット高原は暖かくなり、湿ってきている」と話した。
「アジアの給水塔」にバランスの乱れ、水害リスクが拡大
氷河は水を貯め、高山は水蒸気を遮る。氷河、凍土、積雪、湖沼、陸地の生態系は河川の流れを調節する。そのためチベット高原は「アジアの給水塔」と呼ばれる。
中国科学院チベット高原研究所の徐柏青研究員は、科技日報の記者に「リモートセンシングと実測の資料により、チベット南東部の氷河が1976年以降、毎年平均40メートル後退しており、60メートル以上も後退した年もあることが分かる」と話した。
氷河の後退により湖沼が拡大し、川の流量が増える。徐氏によると、チベット高原中部の色林錯、納木錯など6つの湖沼が、1999年後に急速に拡大している。色林錯は2010年に面積が2349メートルに達し納木錯を上回り、チベットで最大の湖沼になった。
チベット高原の湖沼の水量が毎年増加しているが、うち氷河と凍土の溶融によるものが26%前後にのぼる。徐氏は「我々の納木錯の水量変化の定量分析によると、この割合は52.9%にのぼる」と述べた。
「アジアの給水塔」は現在、バランスを失いつつある。姚氏は科技日報の記者に「全体的に見て、チベット高原東部・南部の季節風が吹く地域の貯水量が減り、北部・西部の西風が吹く地域の貯水量が増えている。また給水塔の固体・液体構造のバランスが乱れ、液体の水の量が増え給水塔の構造が乱れている」と話した。
徐氏は「最近の水資源の増加により、チベット高原の生態が良くなったように感じる。しかし予測によると、氷河の川への補給が今世紀中頃にピークに達し、その後減少を始める。そのため長期的に見ると、未来の水資源不足の潜在的なリスクが拡大している。これにより湖の氷の崩壊、洪水、土石流などの災害リスクも生じる」と指摘した。