イギリスのネイチャー誌は5日、「ロンドンの患者」と称される1人のHIV感染者が、幹細胞移植治療から18カ月後の検査でHIVが検出されなかったという内容の論文を掲載した。彼は「ベルリンの患者」に続いて2人目のHIVが治った人物になる可能性があるが、専門家は治療効果を引き続き観察する必要があると慎重な見方を示している。
「ロンドンの患者」はイギリスの男性患者で、身元は未公開。論文に記載された内容によると、彼は2003年にHIV感染と診断され、2012年に多剤併用療法を開始し、同年後半にホジキンリンパ腫が見つかった。
研究員によると、2016年、この患者は化学療法と造血幹細胞移植を受け、16カ月後の検査でHIVが検出されず、HIV治療の停止を決定した。以後、18カ月にわたり病状は緩和されている。しかし、研究員は「治ったと判断するのはまだ早い」と考えている。
過去にHIVが「治った」と正式に認められたのは「ベルリンの患者」ことティモシー・ブラウンさんだけである。ブラウンさんはHIVと白血病を同時に患い、2007年にベルリンで放射線治療と幹細胞移植を受け、その後に2つの病気は消えた。しかし、その後に別の複数の患者に行った同じ療法は成功しなかった。
研究を指導するユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのラビンドラ・グプタ教授は声明の中で「類似の療法を用いて2人目の患者の病状が緩和されれば、ベルリンの患者は異例ではなく、このような療法(幹細胞移植)が2人の体内のHIVを排除したことを証明できる」としている。
幹細胞移植を受けた2人の共通点は、幹細胞提供者のCCR5受容体に珍しい変異があり、HIVに対する抵抗力が生まれたことである。CCR5はHIVが人体に侵入する際に最初に利用する部分である。
がん治療目的で2人が放射線治療と化学療法を受けたこともHIV消滅につながった可能性がある。しかし、放射線治療と化学療法には副作用がある。「ベルリンの患者」が全身放射線治療を受けたのと異なり、「ロンドンの患者」は比較的穏やかな化学療法を受けた。研究員は、「ロンドンの患者」の経験を生かせる可能性があると見ている。
研究に参与していないインペリアル・カレッジ・ロンドンのグラハム・クック教授も「ロンドンの患者」の経緯に興奮し、「この療法が一部の患者には効果があるがそうでない人もいる理由がわかれば、HIV治療の目標に近づけるだろう」と話した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年3月6日