企業が業務請負を再開し、従業員の食事問題が注目を集めている。感染症抑制期間、上海の多くの飲食企業の経営スタイルに変化が生じ、店内での食事から出前へと変わっている。うち、上海豫園にある老舗店の上海老飯店の料理人は弁当を作り、職場復帰した従業員の食事問題を解決している。
新型コロナウイルス肺炎は多くの飲食企業に影響を及ぼした。上海老飯店を例に挙げると、「年夜飯」(年越しの食事)の予約は早くから埋まっていたが、感染症が流行し、同日の客席稼働率はわずか30%となった。通常ならこの時期は忙しいため、料理人は突然することがなくなり、どうしてよいかわからなかった。
この時、店に1本の電話がかかってきた。「この店の常連客で、大小の宴席をここで行ってきた。今年は新年もここで食事ができなかった、出前はできるか」という内容だった。この電話は料理人のエネルギーとなり、店内での食事はできないが、出前は可能で、味を保証しさえすればよいと考えた。
周辺の状況を調査し、27年の料理人歴を持つ朱松濤さんは、周辺の通りと住民委員会、一部の銀行、公共交通機関の駅などの公共サービスの従業員の多くが自分で食事を用意していることを知った。彼らは、「寒く、温めて食べても味がいまいちで、栄養成分もかなり失われている」と話していた。
特別に1人前の出前メニューを作れないだろうか。朱松濤さんはすぐに行動し、厨房勤務の8人の部門責任者を集めて料理人チームを結成した。
朱松濤さんによると、「1人前の弁当」はおかず3品とスープ、またはおかず4品とスープからなり、2品の肉・魚料理と1品の野菜料理を組み合わせ、5種類のメニューを用意し、店内で提供する上海料理のほか、若い人が好きなエリンギと牛肉のサイコロステーキやチキンカレーなども加えた。
出前というスタイルに合わせ、8人の料理人が朝7時頃に厨房に来て、帽子と二層マスクをつけて作業にとりかかる。また、すべての食器を高温消毒し、弁当箱と食器だけでなく、調理用具なども蒸し器に入れて1時間消毒する。
午前10時頃に準備が終わり、料理人たちは調理を開始する。二層マスクをつけて高温の火の横で調理していると、厨房は普段の熱気が包まれた状態に戻った。盛り付けエリアでは1人の料理人が手袋をつけて作業し、料理が熱いため、手袋をつけていても熱く感じ、1時間で5回着け替える。
11時を過ぎると、180人前の温かい弁当ができあがり、予約を受けた企業に届ける。
「こんにちは、ご注文の弁当を15分後に届けます」。彼は四川中路の銀行に車を走らせながら電話をかけた。
弁当の質を保証するため、3キロメートル以内であれば料理人が配達するが、それより遠い場合は取りに来てもらう。出前サービス業者に委託しない理由について、朱松濤さんは「自分で届けた方が安心」と答えた。
10分後、20人前の弁当が銀行に届き、入り口で待っていた職員は「付近で出前をやっているところは少ない。1人前の弁当は私たちの心と胃を満たす」と述べた。弁当を受け取ると、この職員は朱松濤さんと今後の注文について話し合い、「朱さん、出前を続けるなら、1年間の昼食をお願いしたい」と話した。
銀行の注文を終えると、朱松濤さんの携帯電話が鳴り、「こんにちは、10分後に老飯店の入り口に来てください。誰かに入り口まで持って行かせます」、「ご注文の弁当はもう出発しました。配達の者が連絡します」と対応した。
彼の携帯電話は30分間鳴り続けたが、朱松濤さんは忙しいのはよいことだと感じており、「以前は厨房で忙しかったが、現在は別の戦線で忙しい。働く人たちの食事問題を解決できると思ったら、忙しくても嬉しい」と話した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2020年2月24日