中国ではいま、視聴者から募集した、複数の若い男女からカップルを誕生させる恋愛バラエティー番組「非誠勿擾(冷やかしお断り)」が大きな反響を呼んでいる。今年1月に放送がスタートして以来、衛星テレビのバラエティ番組を対象とした視聴率ランキングで、数週間連続のトップを記録している。
番組は、24人の女性らが主導権を持つ「女性の質問タイム」と、男性出場者が主導権を持つ「男性の質問タイム」の2つの部分からなっている。まずは、容姿、学歴、職業、性格の異なる女性らが、出場者の男性をなじったり、ダメ出ししたりし、気に入らないところがあれば手元のボタンを押して自分のランプを消す。次に、主導権は男性へと移り、男性がまだランプの点灯している女性に質問をする。最終的に、気に入った女性がいれば、手をつないでカップル誕生となる。
中国では90年代末にもお見合い番組のブームがあった。湖南省のテレビ局、湖南テレビが1998年に放送をスタートした番組「玫瑰之約」が人気を呼び、全国のテレビ局がこぞって真似をした。いまから10年以上前の当時、出場者はテレビカメラを前に、どこか世間体を気にした控え目なところがあり、相手に対する条件についても、含みのある言い方が多く見られた。
10年後のいま、80年代生まれ、90年代生まれの若者が結婚適齢期に入りつつある。不動産市場や教育、医療など、この10年間の変化により、いまの若者たちの結婚観も大きく変化しており、車や家など物質面の条件について、ざっくばらんに語るようになっている。
こうした変化がこの番組のなかには表れている。「一緒にサイクリングに行ってくれるか」という男性からの問いに対し、「BMWの中で泣く方がまっし」と答える女性。それを受けて、「BMWが好きなんだろ。だったら、おれに着いてこいよ」とコメントする、貯金額600万元(日本円でおよそ8153万円)の「富二代(金持ちの親を持つ男性)」。「うちはいくつも家がある」「農村出身の嫁はいらない」と発言する、出場者男性の母親。度重なるつばぜり合いが視聴者の目を引きつけている。
穏やかで控え目な、お見合い時代が終わりを告げ、粗野で無遠慮な恋愛時代を迎えている。そこには、金銭や社会的地位、性別役割、家庭関係など結婚をめぐる価値観を前に、自分なりの答えを求めて彷徨(さまよ)う若者たちの姿がある。
「中国国際放送局 日本語部」 2010年4月17日