72歳のある日本人男性は、自分が楽しく過ごせる時間はそれほど長くないと考える。しかし、すべての定年退職したエンジニアが福島第一原発に残る物質の処理作業が悪い結果を招くと思っているわけではない。
「ガンになる前に、私はとっくに死んでいるだろう」と話す山田さんは、270人あまりの定年退職者と高齢の技術者を集めてチームを結成した。チェルノブイリ原発事故後、世界最大規模となる原発事故の現場にいつでも入って処理を行えるよう準備を整えている。報酬はもらわない考えだ。
チームを立ち上げた山田さんは、住友金属工業で28年間働いた経験がある。福島原発の処理作業はなかなか進まず、複雑な任務で、東京電力だけで簡単に処理することはできない。
山田さんは、日本政府が福島第一原発の管理を引き受け、彼のチームの参加を許可し、彼らの経験と専門知識を十分に利用して欲しいと望んでいる。赤十字社のように報酬はいらないという。
その一方で、日本政府の関係者は当初、この積極的な提案に対して冷たい反応を示した。細野豪志首相補佐官は、山田さんのボランティアチームを「決死隊」とけなした。
しかし、5月下旬に東電本部で行われた会議で、細野豪志氏はこの提案を認める姿勢を示している。その時、現場で働く若い作業員が大きな健康リスクに直面することが懸念されていたためだ。
その少し前、福島で3人の作業員が熱中症で倒れ、同じ時期に、少なくとも2カ所の工場の作業員が高放射能区域で作業し、ガンなどの病気になる高リスクに直面していることがわかった。
山田さんは、「問題は、最初の作業員はお金のために集まった人たちで、彼らは作業環境により逃げることができないことだ」と述べる。山田さんは現在、東電の近くにある小さな事務所で仕事をしている。「私たちは報酬はいらない。そのため、東電と対等に交流できる」と話し、自分のチームが最高の安全基準を守ることを強調した。
東京電力は、2012年1月までに3基の原子炉を無事に閉鎖することを目標にしている。専門家は、その後にウランとプルトニウムを取り除いて安全な状態にするため、10年または更に長い計画が出されると予測する。
滋賀県出身の63歳の建築作業員である石田和彦さんも、自分から進んで山田さんのチームへの参加を申し出た。若いころに建築作業員として福島第一原発のハウジングにかかわったことがある。彼は、3月11日の東日本大震災後に起きた水素爆発の瞬間、非常に複雑な心境だったと語る。
妻に現場で作業したい意思を伝えると、妻は「あなたがやるべきことをしてきて」と答えた。
海江田万里経済産業相は山田さんと会見し、ボランティアチームの提案を認めたい姿勢を見せた。
情況から言って、「決死隊」は必要だ。しかし、これは最後の手段だ。「私は自分で望んでするが、それぞれが自分で決めなければいけない」と山田さんは話す。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年6月10日