増える介護施設での虐待
近年、日本では「介護の負担」が虐待や殺人事件を招くケースが発生している。いわゆる「老老介護(高齢者が高齢者の介護をせざるをえない状況)」が悲劇の元凶である。また、介護疲れが「一家心中」といった極端な事件を発生させることもある。
老人ホームなどの福祉施設ではよいケアが受けられるはずであるが、最近は、介護施設における虐待も深刻化している。厚生労働省の調査によれば、2010年度に介護施設内で起きた虐待件数は96件で、前年より26.3%増えた。そのうち、身体的虐待が約7割、暴言などの心理的虐待や介護放棄など陰湿な虐待行為も増加傾向にあった。
法の制定で防止強化を
日本政府は2006年4月に「高齢者虐待防止法」を実施、同時に高齢者に対する虐待の実態を調査し始めた。政府と地方自治体は高齢者を保護するための通報システムを設け、国民に高齢者虐待の防止への理解と協力を求めた。
「介護疲れ」、「認知障害への無理解」、「高齢者と介護者の性格の不一致」、「介護者の健康問題」、「経済負担」が高齢者虐待の発生の要因であるという調査結果がある。これらを未然に防ぐことが、高齢者虐待を防ぐ近道になるのではないか。厚生労働省は注意が必要な「虐待の兆候」として、「体によく傷をつくっている」、「食欲が急に減った」、「お金がないと訴える」「生活環境が荒れている」「表情がこわばる」「家に帰りたがらない」などを挙げている。また、加害者に見られる兆候として、「高齢者に関心を持たない」、「専門家のアドバイスを聞かない」、「介護に疲れている」、「うつなど精神状態の悪化」などを挙げている。
「高齢者虐待防止法」によると、国民は虐待行為を発見した場合、地方自治体に報告する義務がある。東京都福祉保健局が制定した「東京都高齢者虐待対応マニュアル」は、高齢者に対する虐待を発見した場合、専門家が状況を確認した上で、その家族に対して指導を実施、また、家庭の状況に応じて介護などの支援を提供するとしている。一連の支援を行った後も、その過程の状況を引き続き観察し、支援が有効であったかを評価する。
一部の虐待は相談や介護支援で解決できない。東京都は、医療機関や、警察など専門機関への支援を要請する「二次対応」の実施をまもなく開始するという。
不自由な高齢者を家族が世話している。介護疲れによる極端な行動や悲劇の発生を防ぐためには、政府や国民が介護者の精神的・経済的負担を減らすよう様々な対策を考える必要がある。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2011年12月19日