味噌の作り方も日本酒とほぼ同様で、発酵の力を必要とする。神崎町の農業法人「神崎自然塾」の代表、鈴木一司氏は、米や当地品種の大豆を栽培し、これら有機農作物を使って味噌を作っている。
味噌の製造時期も主に冬に行われる。まず米を蒸してこうじを作る。その後、塩と蒸した大豆を加え、肉をミンチするのと同様の機械を使って粉砕し、水を入れて発酵させる。塩を入れるのは保存のためで、一般的に10分の1の塩が加えられる。こうじの米と大豆の割合は半分ずつである。こうじが多ければ多いほど、味噌は甘くなる。
鈴木一司氏は、通常1年は発酵しないと、濃厚な味の味噌ができないと説明する。3年発酵すれば、さらに芳醇な味わいとなる。3年間発酵させた味噌が入っている大きな桶を鈴木氏が開くと、すぐに美酒に似た香りが漂ってきた。
神崎町は「発酵の故郷」というイメージ作りに尽力してきた。ここで行われる酒蔵祭りには毎年3万5千人が訪れる。それ以外にも、毎年多くの人が東京などの都市から「神崎自然塾」による農業体験に参加している。そこでは種蒔き、草刈り、収穫、味噌作りなどが行われており、多くの人が発酵文化を学ぶようになった。鈴木氏は、「この20年で、神崎町の人口は減少し、活力が失われた。しかし発酵文化に対する関心が広がる中、神崎町は活力を取り戻し、若者も増加している」と言う。
近年、農業や自然食品に対する関心から、神崎町に移住するひとが増えてきた。今年43歳になる周浦宏幸さんは東京の不動産会社で働いていたが、2009年に神崎町に移り、鈴木氏の植えた天然大豆を使った豆腐店を開いた。46歳の福士智之さんは千葉県松戸市の人だが、寺田本家の酵母を利用して、2009年にパン屋を開いた。
これこそ、日本の発酵文化の魅力である。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年1月27日