由任町が「白菜並みの地価」で住宅地を販売したいきさつについて、町役場担当者は「最近10年以上、町の人口は減少の一途をたどっている。現在の総人口はわずか5900人、年100人のペースで減り続けている」と説明。また、高齢化問題も深刻化しているという。このため、町役場は町外からの転入者を増やすことで、人口減少を食い止め、町に活気を取り戻すための戦略を練った。
とは言うものの、由仁町の政策は、世間の興味を引く目的のパフォーマンスに過ぎないという感は否めない。今回売り出されたのはわずか8区画、たとえ町外からの転入者を惹きつけても、これではまるで「焼け石に水」の状態だ。今回の売り出しは、町の人気を高めて企業誘致・資金導入を狙うという裏の事情からのものだと外部では認識されている。
さらにふに落ちないのは、このような低価格なのに、由仁町が売り惜しみしないばかりか、むしろ心底売り出したそうにしていることだ。公告では、有名な芳草園や温泉、観光地など現地の魅力を最大限アピールしているが、土地購入の申込件数は7月17日の時点でわずか約200件。これは、殺到するとの想像とはほど遠い数字だ。
関係者は「申し込みが伸び悩んでいるのは、冬の寒さと地理的な不便さによると見られるが、最大の原因は、住宅購入後に払わなければならない高い税金だろう。これは、誰もが負担可能という訳にはいかない」と指摘。このほか、昨年の東日本大震災後、多くの不動産投資家が日本の不動産に対して「模様眺め」の態度を保っており、市況が低迷していることから、たとえ破格の価格であっても、投資家からの支持が得られにくいとの見方もある。
1990年代、日本は深刻な不動産バブル崩壊という危機を経験した。20年経った今でもなお、日本の不動産業は完全に回復を遂げた訳ではない。由仁町の「白菜並みの地価」での土地分譲は、不動産バブル崩壊後の消費者心理について、人々が再考するきっかけとなった。
「人民網日本語版」2012年8月8日