◆1線都市の幸福感、低い数値を示す
社会学者の費孝通氏はかつて、「中国人は個人ではなく、家庭や人との交際の中で生きている」と指摘した。専門家は、「このような状況に大きな変化は生じていない。家庭は依然として、中国人の生活で最も重要な要素であり、社会の最も基本的な単位である。これらの特徴が生活内に反映され、中国人の非常に矛盾した価値観が形成される。中国人は他人に対して冷淡で、老人に手を貸そうとも、募金に応じようともしない。しかし親戚や友人に対しては温かだ」と指摘した。
20都市の幸福感には地域的な特徴が見られたが、自分の健康と未来のリスクを懸念するという、一つの共通点があった。幸福感の源について、中国都市部の住民の家計・社会環境がもたらす幸福感が際立って低かった。これは中国都市部の住民には社会保障に依存する傾向があり、社会環境の変化から一定の不安が生じていることを示している。また7割以上の回答者は、高齢者扶養の出費がかさむと回答し、8割は子供の教育費が高いと回答した。
専門家は、「都市の生活環境、仕事の先行き、家計等に対する懸念から、1線都市の幸福感が下がっている。2・3・4線都市の住民は、生活に対して平然とした態度を示している。これはその都市が発展の時期を迎えていることと関連している。人々の収入が増加する一方で、物価上昇率が低く抑えられ、都市の混雑度も適度なレベルに抑えられており、満足感が生まれている。現在すでに1線都市を離れる傾向が見え始めており、2・3・4線都市を選択する人が増えている。これはよい傾向だ」と指摘した。
◆GDPに代わる基準を提案
かつてGDPという数字が、経済の発展と社会の進歩を示す唯一の基準とされていた。しかし、個人の感覚との間にズレが生じており、人々は「GDPという基準に問題があるのでは」と考え直している。
これらの問題の答えを導き出すため、フランスのサルコジ元大統領は2008年2月、「幸福度測定に関する委員会」を発足させ、著名なエコノミストを招き社会の発展を示す基準について研究を進めた。最終的に提出された報告書は、GDPの欠陥、生活の質・持続可能な発展、環境の3つの面から、主な国際機関と各国政府に対してGDPの代わりに国民総幸福量(GNH)を用い、GDPの社会発展に対するミスリードを正すよう提案した。
同様の議論と行動が中国でも見られる。昨年より、広東省、山東省、河南省等は、人民の幸福感を第12次五カ年計画の内容、および幹部の審査システムに盛り込んだ。
「人民網日本語版」2012年9月19日