気味の悪い「ナマコ」
ナマコはそれ自身に味は無く、どのような調理方法でも食べられるため、料理する側の腕が試される食材だ。美食家たちはレストランのレベルがどの程度かを判断するために、わざとナマコ料理を注文する。それを食べれば、シェフの腕前は一目瞭然である。
「初めてナマコを食べる時は、かなり勇気が要る」と人々は言う。体中を柔らかいとげで覆われ、まるで錆びているかのような色をしているナマコは、この世のものとは思えないくらい不気味である。加えて、とてつもなく生臭いのだ。しかし、そんな見た目とは裏腹に、ナマコは何とも栄養豊富な食材である。
美食家としても知られる清代の詩人で散文作家の袁枚は、自らの著書の中で、色が似ている椎茸やキクラゲをナマコと一緒に料理すると風味豊かで格別な味になると記している。ナマコは海の「人参」と言われ、中国での価値はとても高い。これは中国の近海ではあまり採れないことにも関係する。徳川の時世、日本はナマコを海外に輸出していた。ナマコ以外にも、アワビやフカヒレなどの高級海産物が中国への輸出品だった。
しかし、そうは言っても、ナマコが好きな人は少ないようだ。例えば、西太后は好きではなかったという。彼女は肉が好きで、特にアヒルが大好物で、海のものにはまったく興味を示さなかった。