2月8日、『就業促進計画(2011~2015年)の承認に関する通知』が中国国務院から発表された。この計画に基づき「十二・五」期間、就業優先戦略など4つの措置を実践することにより、経済成長を就業促進の押し車としていくことになる。この計画のなか、「十二・五期間、最低給与水準の年平均成長率を13%以上とする」ことを明確に提示したことが人々の耳目を集めている。推算すると、中国の最低給与水準は十二・五期間に累計で65%もの上げ幅となる。
この計画を聞いて思い返されるのは、日本政府が1960年代に提唱し成功させた「国民所得倍増計画」だろう。1960年、ケインズ経済学に傾倒する池田勇人が絶対的得票率で首相に選出され、就任後直ちに提唱したのが「国民所得倍増計画」である。「高度経済成長と同時に、労働者の給与水準がGDP成長と同程度に伸びていかなければ、社会生産力と消費水準の大きな隔たりが経済の持続的成長を妨げることになる。所得を倍増させてこそ国家経済の内需不足と生産力過剰の問題を解決できるのだ」との考えだった。
この「国民所得倍増計画」は日本で消費者革命の引き金となり、日本経済が大きく飛躍する転換点ともなった。1967年までにGDPの倍増に合わせるように国民所得も倍増し、1968年に日本はアメリカに次ぐ世界第二の経済大国となった。1960年から1973年の間に日本人の実収入は三倍に増え、失業率も1.1%から1.3%程度の低水準が保たれていた。