日本の実例が示すのは、一国の経済基盤が一定の条件を満たしたとき、生産力と共に国民消費が増大して初めて社会の急速成長の原動力が生まれるということである。経済成長モデルを転換するのに難儀している中国にとって、この日本の事例から学ぶべき点は多い。特に今日《こんにち》のように不動産価格が高騰し、物価の上昇にも歯止めが効かないという状況では、より現実的な意味を持つ。改革開放後30年を経た今、中国では経済の急速成長を通して大量の社会資産が蓄積されており、「一部の人が先に豊かに」という目標は既に達成されたと言えるが、「先に豊かになった一部の人」が大衆を伴って共に豊かになるという作業は、今後も続けていかねばならないだろう。
貧富の差を解消した上での国民収入の合理的な分配は、既に中国の現実的な課題となっている。時期をみて「国民所得倍増計画」を推進することはこの問題を解決する有効な策であり、経済の急速成長の中で中国が社会的安定を維持するための打開策となろう。