文=インド東部海軍司令部前司令官 プリウェル・ダース(音訳)
このところ、中国の海洋大国への急速発展に関するマスコミ報道があふれている。中国海軍の戦略も「近海防御」から「遠洋軍事行動」に変わり、中国艦隊によるアデン湾での一年以上に渡る海賊巡視行動が、それがただのスローガンでないことを証明しているかのようだ。
海洋国家に必要な要素を持たない中国
100年ほど前、米国海軍軍官のアルフレッド・タイラーはヨーロッパの歴史を研究し、一国家が海洋国家になれるかどうかを確定するための複数の要素を確立した。国土面積や港に関して、中国はもちろん全て整っている。だが、中国は両側が海に面しておらず、半島国家でもないため、「遠洋」への道はどうしても制限を受けてしまう。北には日本、南にはフィリピン、しかもそれらの国はある意味米国の盟友である。
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東中国海や南中国海の貿易取引は非常に活発に行われているが、だからといって中国がインド洋貿易を掌握するインドのように、これらの貿易取引の実権を握っているかというと、そうではない。また、湾岸からのエネルギールートも脅かされる恐れがある。
よって、中国は地理的には「合格」したとしても、海洋国家にとって不利な要素をいくつか抱えている。人口規模では誰にも負けないが、海洋事業に対する国民的素質はゼロに近い。これは、商用船隊や船員数、漁業規模に限ったことではなく、一般庶民と海との基本的な関係や、航海事業への熱意が大きなポイントとなってくる。海をレジャー等の友好的資源ととらえる米国やヨーロッパ諸国と違い、中国やインドにとっての海は、災いをもたらす敵というイメージが強い。