最近南中国海で中国とベトナムの摩擦が再燃している。中越関係に対して悲観的な一部の人は、双方の協力による解決はもう無理なようだと感じている。(文:王玉主・中国社会科学院アジア太平洋研究所ASEAN問題専門家。人民日報海外版掲載)
実際には、南中国海の帰属と資源開発・利用をめぐり中越は常に係争を抱えてきたが、このために中越友好協力の大局が破壊されてはいない。また、経済・貿易協力を紐帯とする両国の相互依存も徐々に深まっている。筆者は数日前に通関地で調査したが、中越国境貿易は依然として非常に活発で、南中国海での摩擦による影響は受けていなかった。これは依然としてウィンウィンを基礎とする経済・貿易協力が両国関係の本流であること、係争を棚上げにした共同開発による南中国海問題の解決が双方の利益に合致することを物語っている。
このように言うのは、南中国海問題は中越関係の発展に重要な影響を及ぼしはするものの、両国関係の全てでは決してないことに目を向ける必要があるからだ。事実、中越関係は新中国成立以来、多くの波瀾を経たが、冷戦終結後は両国・両党は一貫して緊密な協力を維持し、上層部は頻繁に交流し、中国・ASEAN協力の枠組みで生き生きとした全方位的協力を行っている。南中国海問題は常に存在してきたが、中越関係の急速な発展を妨げることはなかった。歴史の残した問題であるこの問題が近年先鋭化してきたのは、主に区域内外の要素の相互作用によるものだ。
まず、中国経済の急速な台頭は、周辺国にとって発展のチャンスを意味するが、ベトナムにとっては対中貿易の急速な伸びは持続的な対中赤字を伴うものだった。2010年にその額は140億ドルを超えた。輸出を土台とするベトナムが、中国との協力で損をしたと感じたのは明らかだ。これはベトナム民衆の対中認識に一定の影響を及ぼし、南中国海係争における極端な行動の数々となって表われた。次に、中国の実力の増強も、係争を棚上げして共同開発することにベトナムが消極的になっている理由だ。こうした発展による力の変化は、ベトナムが最終的に係争区域の主権を求める上で不利だからだ。域外の力、特に米国の仰々しい介入が南中国海情勢をさらに複雑にしているのも事実だ。
だが、協力すれば共に利し、争えば共に傷つくという中越関係の法則がこれによって変わってはいない。現状を見ると、南中国海に対するベトナムの関心はやはり経済により比重があるからだ。ベトナム製造業の大規模な発展は、必然的にエネルギー需要の増加を伴う。国際原油価格の高騰が続く中、国内需要のためにも輸出のためにも南中国海の豊富な石油・天然ガス資源は非常に大きな魅力だ。だがこのために一方的に強硬な行動に出て、重要な経済相手国である中国との関係を破壊するのは引き合わない。ベトナムが最近中国に特使を派遣した大きな理由はこれかもしれない。
いかにして係争を効果的に棚上げにし、共同開発とウィンウィンを実現するかは、中越双方にとってより差し迫った課題だ。結局のところ、中国にとってもベトナムにとっても当面の最重要課題は、経済成長の維持と国民生活水準の向上なのだ。主権係争については、トウ小平氏がかつて強調したように、後の世代に解決を委ねることができる。無論、共同開発から利益を得るには、まず係争棚上げの原則を確固不動として貫徹しなければならない。これは現在の国際環境の下、双方の指導者にとって共に一定の政治的勇気を必要とすることだ。
「人民網日本語版」2011年7月11日