リビアは他のアラブ諸国と同様、8月1日からイスラム教の断食月「ラマダン」に入った。イスラム教徒にとってラマダンは本来神聖で、めでたく、敬うべき月で、衝突、流血、戦争を遠ざけることが趣旨の1つだ。だがリビア人にとって今年のラマダンは戦火の硝煙と轟々たる砲声の中で幕を開いた。(文:黄培昭・本紙中東支局首席記者。「人民日報海外版」コラム「望海楼」掲載)
ラマダン初日と2日目もリビアの反体制派と政府軍は各地で激戦を継続。反体制派は甚大な損害を被り、新たな占領地の一部も政府軍に奪還された。北大西洋条約機構(NATO)もリビアの軍事目標への空爆を継続した。中東メディアは神聖なラマダンの間もリビア国内の戦闘は止まないようだと分析している。リビアの指導者カダフィ大佐の次男セイフ氏は1日のテレビ演説で「リビアは戦い抜く」「たとえラマダンの間も、たとえNATOが空爆を停止しても、最終的な勝利を得るまで反体制派への攻撃を継続する」と述べた。
セイフ氏の演説は中東メディアの予測や分析を補強するものだが、武力では問題を解決できず、政治交渉こそがリビアの苦境を打開する唯一の道であることはすでに事実によって十分に証明されている。第1に、反体制派は打開の手段も力も尽きている。軍事力で首都トリポリを攻略し、カダフィ大佐を屈服させられる可能性は極めてわずかだ。特にユニス最高軍事司令官が数日前に殺害されたことで反体制派は足並みが乱れ、余裕を失い、軍事的挫折を連日重ねている。
第2にNATOの軍事行動はすでに袋小路に入っており、リビア攻撃の継続は正反対の結果をもたらす。あるエジプト紙は「リビアでのフランスなどの軍事行動はすでに継続困難だ。連日爆撃し、もう爆撃できる目標はない。NATOは巨額の資金を使い果たしただけで、何の目的も達成していない」と指摘している。
第3にカダフィ大佐が軍事的勝利を収め、反体制派を屈服させることもあり得ない。NATOの激しい空爆が続く中、カダフィ大佐は弱みを見せず、頻繁にテレビ演説を行い、全力で戦う決意を表明し、訴えかけている。だが四面楚歌で、日増しに孤立を深め、必死に持ちこたえているのが実情だ。政府軍はNATOの攻撃ですでに痛手を負ってもいる。カダフィ大佐が軍事的手段で大逆転を果たす望みはもはやない。
各者共に軍事面で行き詰まっているのなら、政治交渉による解決の道しかない。実はアフリカ連合(AU)はリビアの膠着状態を打開する「ルートマップ」をとっくに提出している。ただNATOが当時、武力でカダフィ大佐を降伏させられるとひたすら信じ、AUのロードマップに耳を貸さず、一顧だにしなかっただけだ。AUの提案に真剣に向き合うべき時が来たのだ。
「人民網日本語版」2011年8月5日