北大西洋条約機構(NATO)の武装ヘリがパキスタンの軍事検問所を空爆し、死傷者が出た事件に対して、パキスタンと米国の関心は明らかに異なる。米政府の関心は「誤爆」によって対タリバン攻撃へのパキスタンの支持を失う可能性にある。一方パキスタン政府は、この明らかな主権侵害に対して米国とそのNATOの同盟国がどのような回答をするかをより重視している。
事件の性質の認識における差異は、大きな現実的問題を突きつけている。米国の発動したこの対テロ戦争はどのように継続されていくのか?この戦争は世界にどのような影響を与えるのか?
米国はいつも「ルールの重視」を口にする。パキスタンの軍事検問所への空爆について論じる上で、まず明らかにしなければならないのは、米国とNATOが国際法の準則を破壊したということだ。いかに強大であろうと、どの国も他国の主権を勝手に侵害してはならない。これは地球村の最も基本的なルールだ。テロ対策は無論重要だが、好き勝手に振る舞っていいという意味ではない。各国の支持と協力にも前提条件があるのだ。
空爆事件は偶発的に見えるが、実は一定の必然性を秘めている。米政府は今年6月に新たな国家対テロ戦略を発表した。最近のグローバルなテロ情勢の変化に対応した最新の調整だ。同戦略は「手術用メス」式の特殊攻撃を新たな対テロ戦略の重要手段の1つと定めている。現在、世界の多くの国や地域に米国の対テロ特殊部隊による作戦の印や兆候が見られる。こうした攻撃方式は根本的に言って、かつてブッシュ政権の打ち出した「先制」手段と余り大差ない。「先制」が公然たる越境攻撃だったのに対して、「手術用メス」はこそこそした「越境攻撃」と言えよう。この「境」とは他国の主権を意味する。
米国は2004年以降、パキスタンの部落地帯で無人機による爆撃を行い、テロリスト1000人以上を殺害するとともに、無辜の市民にも多数の犠牲をもたらした。パキスタン民衆は強い反米感情を抱いている。パキスタンは対テロ問題で米国と行動を共にすることで、人的犠牲や経済的損害を強いられたのみならず、政府の治安維持能力も削がれた。これは対テロ戦争の推進にマイナスなだけでなく、長期的な動揺ももたらす恐れがある。
米国とNATOは空爆事件について深い省察が必要だ。「謝罪」や「誤爆」に対する技術的分析のみに止まってはならない。パキスタンの独立、主権、領土保全を的確に尊重するにはどうすればいいかという視点から考えなければ、同様の「誤爆」は繰り返されうる。
「人民網日本語版」2011年11月29日