2012年に入って、世界の軍事は非常に複雑な局面を呈している。これまでの問題が残るだけでなく、新たな問題が絶えず現れ、それらが入り混じり、解決を難しくしている。
1990年代半ば、米国は、2015年から2020年まで自身の覇権を脅かす国はないと信じ、中東や中央アジア地域で安全秩序の「整理」に力を入れてきた。オバマ大統領の就任後、米国は海外の軍事配備を縮小し、アジア太平洋地域の経済力や国際影響力の高まりを受け、軍事の海外戦略の重点を同地域に置くようになった。
米国は冷戦時、欧州を重点とした世界範囲の覇権争いを行い、経済を支えに旧ソ連と軍事力で対抗していた。この時期、欧州は安全情勢が世界で最も複雑な地域となった。だが、今回の米国の戦略的布石の調整には次の特徴が見られる。太平洋を跨ぐ戦略を基盤に、アジア太平洋地域を中心にし、冷戦時の経済で軍事的対抗を支えたやり方を、軍事力で経済面の勢力範囲を拡大させるというやり方に変えるというものだ。これは錯綜し、互いに入り混じる対抗で、融合する中にも奪い合いや駆け引きがある。
2012年初めに米国が打ち出した新軍事戦略には、「パートナー」や同盟国への警戒のほか、想定のライバルに対する抑制が盛り込まれた。アジア太平洋地域に、旧ソ連のような米国がライバル視する対象はない。中国は平和・発展を国策とし、新しい形の安全観を提唱し、「ウィン・ウィン」を主張している。米国はこれに対し、期待しながらも心配しているのだ。米国は中国の発展に対して「警戒と誘導」の策をとっている中国の経済力の増強に伴い、中国は米国の発展にますます欠かせない存在となっているが、米国は中国の成長に対して終始複雑な気持ちを持ち続けている。アジア太平洋地域の多くの国の発展と安全は中国と緊密にかかわっているが、NATOのような機構がないため、米国は諸国を引き込みながらも警戒するという戦略をとるしかない。米国の世界戦略のこうした調整は、まさに加速の時期にあり、今後どのような形に定着するかはまだわからない。
米国による世界戦略の調整加速に伴い、多くの国も調整に乗り出し、新たな世界的な軍事戦略の調整が幕を開けた。アジア太平洋地域を例にすると、日本はこうした調整の動きの中で「モデル」になることを表明している。インドは冷戦後、国レベルで「東進戦略」をとり、軍事面では「優位性と拡張」を特徴とした軍事戦略を遂行し、アジア太平洋地域で軍事影響力を高めた。また、東南アジア諸国も軍事戦略を調整し、米国によるアジア太平洋の新軍事構造の構築を機に自国の利益の最大化を図ろうとしている。こうした米国が主導し、多国が争い合うという状況は、アジア太平洋地域に未曾有の複雑な局面をもたらしている。
冷戦時、米国と旧ソ連は直接交戦しなかったが、世界各地の地域紛争には米ソの影があった。今では、世界制覇戦略の転換に伴い、米国の中国に対する軍事脅威は旧ソ連に対して行った「ライン式」から「戦略スポット式」に変わり、兵力配備は「第一列島線」の前線から「第二列島線」の奥地に重点を移し、同盟国やパートナーの軍事力を生かして中国の発展を邪魔したり遅らせたりするようになった。つまり、「直接交戦のない駆け引き」である。
今回の世界の軍事構造の変化は、二極構造崩壊後の変化より不確かな点が多く、世界の新軍事構造の形成を速める可能性がある。ここから、世界の軍事は、「冷争」時代に突入すると言える。いわゆる「冷争」は、軍事力の競合と軍事技術レベルの駆け引きが主な特徴である。この時代に有利な立場を獲得できるかどうかは、軍事戦略の内容にかかっている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2012年2月13日